HUAWEI P30 Proはデジカメを超えたのか?
HUAWEI P30 Proはデジタルカメラの優勢を脅かす
ミラーレス一眼や高級コンデジといったデジタルカメラがスマートフォンのカメラに対して優位になっている点は何だろうか?
ひとつは画質である。
スマホのセンサー(撮像素子)は機能上、ミラーレスカメラのようにフルサイズやAPS-Cといったサイズは不可能だ。
センサーサイズが大きいほど光量も多く取り込めるために暗所性能に優れ、白飛びや黒つぶれを防ぎ、階調表現が豊かである。
さらには、いま世界的に流行しているボケ量も豊富になり、画質が良いとされている。
もうひとつは、広角から超望遠まで多彩な画角が可能になる点だ。
とくにレンズ交換式カメラはレンスの選択が豊富になるため、画角の制約は少ない。高級コンデジも、いまや、望遠側が200㎜や360㎜までズーム可能な機種も珍しくなく、レンズ性能でスマホと差別化を図ろうという意図も見える。
しかし、そうしたデジタルカメラの優位性を揺るがすスマホが3月26日にフランス・パリで発表された。
それがファーウェイ・テクノロジーズが発表した「HUAWEI P30」シリーズ、とくにカメラ性能の大幅な向上に力を入れた「HUAWEI P30 Pro」である。
「P30 Pro」は光学5倍とデジタル10倍で最大ズーム1343mm相当
P30 Proが発表会で、メディアが注目し驚愕したのは、デジタルカメラ顔負けのズーム能力だ。
その話の前に、カメラ性能に注力したP30 Proの仕組みを解説したい。
ファーウェイは世界一流メーカーのライカと提携し、その性能をスマホカメラに盛り込んでいる。
今回も「Leica Quad Camera」という名の4つのカメラを組み込み、それぞれに役割を与えた。
- 4000万画素の広角カメラ(27mm/F1.6)
- 2000万画素の超広角カメラ(16mm/F2.2)
- 800万画素の望遠カメラ(125mm/F3.4)
- 3D情報を取得する「ToFカメラ」
まずは、フルサイズ(35㎜判)換算で、16㎜の超広角から125㎜の望遠までカバーしている。普段使いでは、このくらいの画角幅があれば十分かもしれない。
ただ、今回、ファーウェイがイノベーションを印象づけたのは、光学5倍ズームに加えて10倍のデジタルズーム(ファーウエイはハイブリッドズームと称している)を可能にした点である。
最大50倍ズームによって、メインカメラの27mm相当を基準とした場合、ズームは1343mm相当ということになる。
作例をみると、流石に最大ズームはやや甘い感じがするが、近い将来、とんでもないスマホの登場を予感させる。
なお、P30 Proがいつ日本で発売されるのか、まだ発表されていない。しかし、販売されれば、カメラ好きの琴線に触れるに違いない。
イノベーションなきカメラ業界では衰退する
カシオのコンデジ事業撤退にみるスマホの脅威
1300㎜超の超望遠ズームを備えたファーウェイP30 Proの登場は、カメラ業界に新たな課題を突きつけたのではないだろうか。
いまさら申し上げるまでもなく、スマホは通話、通信、カメラ、ビデオ、レコーダーなどあらゆるデジタル機能を盛り込んだ端末である。
一方、デジタルカメラは静止画と動画に特化した撮影機器だ。その特化型機器のカメラがスマホの余技ともいえるカメラ性能で肉薄され、並び、追い越されたら、マニアでない限り、一般消費者はスマホを選択するだろう。
実際、その前例は最近、目の当たりにしたばかりだ。
2018年5月9日、カシオ計算機は消費者向けコンパクトデジタルカメラ事業から撤退すると発表した。
高性能カメラを搭載したスマホが普及し、コンデジの需要が激減したのが原因だ。コンデジなど「レンズ一体型デジタルカメラ」の出荷台数のピークは2008年。出荷台数は1億1000万台だった。しかし、約10年後の2018年は866万台まで激減している。(カメラ映像機器工業会調べ)
もっとも、コンデジなどレンズ一体型カメラが後退した背景には、消費者が画質重視に着目して大型センサーを搭載するデジタル一眼レフやミラーレス一眼に移行した面もある。
先日、海外のカメラ系YouTuberがカメラの最高峰ともいえるライカM10とiPhoneXSのカメラで撮影し、画質の比較動画を配信していた。正直言って「スマホの画質もここまで進化したのか」と思わせる画質だった。
消費者を惹きつけるのは革新や新技術!価格や宣伝戦略だけでは勝てない
いまや、コンデジだけでなく、ミラーレスなどレンズ交換式カメラも安泰とはいえないほど、スマホカメラの進化は著しい。
では、消費者はカメラを選択する際に何を基準に選ぶのか?
- フォルム
- 価格
- 画質
- AFの速度と精度
- 焦点距離
- 携帯性や使い勝手
- メーカー
プロカメラマンなら防滴防塵やダブルスロットといった強靭さやデータの安全管理面も考慮に入れるだろうが、一般ユーザーはスタイルや価格、AFの速度などが気になるであろう。
ただ、本当に売れるカメラを誕生させるには、それだけでは物足りない。
やはり、「驚き」が最重要なテーマだと思う。
2018年春、ソニーがα7Ⅲを発表し、長期間に渡って人々の人気を集めたのは「あの性能なのにあの価格」という驚きである。
その後、一眼レフの衰退が本格化したことを考えると、α7Ⅲは驚きを伴って世に誕生したゲームチェンジャーだったわけだ。
「驚き」は感動である。つまり、消費者の情緒に響かなければ、カメラは売れない。
その驚きを生み出すためには、商品そのものに、かつて経験したことのない新技術や革新がなければいけない。
最近、中国メーカーがカメラ関連商品やレンズなどで驚きを提供するようになった。「悪かろう、安かろう」の時代は終わって「安かろう、良かろう」になりつつある。
一方、国内のメーカーを見渡すと、驚きを提供しているのはソニーにしか見当たらない。
そこが、ソニー躍進の源泉なのだと思う。
私は絵作りの秀逸さという点でフジフィルムのカメラが好きだが、それでもソニーα7Ⅲを所有している。
その理由は単純だ。革新と驚きがあるからだ。
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