なぜ、EOS RPは唯一無二のミラーレスなのか?
初キヤノン機は圧倒的個性を感じたEOS RPを選んだ
若い頃、仕事のためにNikon機(F3)で写真撮影を覚え、長いブランクを経て、趣味カメラとして、Leica、SONY、富士フイルム、PENTAX、そして再びNikonのFマウントを選んできた。どのメーカーにも得意分野があるため、可能な限り、売却することなく、ケース・バイ・ケースに応じて機種を使い分けている。
フィルム時代は描写や色味はレンズとフィルム、とくにフィルムの種類に依拠する度合いが高かった。
しかし、デジタル時代の現在はセンサーと画像処理エンジンの違いによって絵作りが異なる。たとえば、富士フイルムはフィルムルックな色味、ソニーはややライカ寄りの色味とAFが優秀なのでしっかりした絵作り、Nikonは癖のない自然な色と表現、ペンタックスはとくに自然・緑の描写が美しいといった印象だ。
そのため、異なるメーカーの機材で表現の特徴や違いを楽しんでいる。
で、王者キヤノンである。
私はNikon育ちということもあり、キヤノンは使ったことがなかった。現場時代、報道機関は読売系がキヤノンを使用していたが、他のメディアはNikonだったと記憶している。
ただ、その後は、後輩から聞くところによると、1990年代からキヤノンが急成長し、他の報道機関も採用し始めた。ちなみに、この原稿を書き始める直前、東京五輪の女子ソフトボール予選を視聴していたが、カメラマン席はおそらくキヤノンと思われる白レンスが多かったような気がする。
ミラーレスではソニーがトップメーカーだが、一眼レフとミラーレスを合わせると、キヤノンはいまでも最も出荷量の多いメーカーではなかろうか。しかも、最近の販売動向を見ていると、キヤノンはミラーレスでもソニーを猛追している。
キヤノンは肌色が綺麗だという評判からポートレートにもよく使用されている。かねてからキヤノン機の絵作りや色味、機材の使い勝手を経験してみたいと思っていた。
ただ、私は機材選びの際に他人の評判を気にしない。評判が悪くても使ってみると意外に良かった経験が少なくないからだ。その逆もある。だから、自分の目や手で確かめないと気が済まない。
で、キヤノン機を調べていると、他のメーカーにはない、圧倒的に個性的なカメラがあった。
それがフルサイズのEOS RPだった。
EOS RPは「軽い、安い、フルサイズ」の3拍子が揃った稀有なモデル
EOS RPはキヤノンのミラーレス機のなかでエントリークラスと位置付けられている。
確かに連射性能は他の機種に劣るし、ファンクションボタンも少ない。しかし、私の用途は日常的なスナップである。連射も不要だし、数多くのファンクションボタンも必要ない。極端なことを言えば、Leica M10-PにAFが付いているくらいで十分なのだ。
だから、スペック的には必要十分以上だった。使用感等は後ほど詳しく説明したい。
- 有効2620万画素
- ISO感度 標準100~40000
- 連射 最高約5コマ/秒
- 液晶モニター104万ドット・バリアングル
- 動画 4K24p
- 132.5x85x70mm(幅x高さx奥行き)
- 重さ 440g(バッテリー、メモリーカード含め約485g)
M10-Pと同様、ボディ内手振れ補正は搭載されていないが、ボディ重量は440gと圧倒的に軽量コンパクト。画素数はEOS R6よりやや多めで、ちょうど良い。価格は新品で10万円前後。それでいてフルサイズなのである。
新品10万円前後のカメラといえば、富士フイルムのAPS-C機・X-S10やX-E4と同価格帯だが、フルサイズでは他に見当たらない。この安さと軽量コンパクトさを併せ持ったフルサイズは唯一無二の存在だ。なんと言ってもフルサイズは立体的な絵作りが期待でき、画質にも余裕がある。
EOS RPが登場したのは2019年3月。当時の初値は15万5000円前後だった。2年余りを経過し、当時の2/3まで値下がりしたことになる。しかし、いまだに現行機種である。
当時、フルサイズといえば、ソニーα7Ⅲ旋風が吹き荒れた時期。キヤノンとニコンがあわてて初のフルサイズミラーレスとしてEOS RやZ6、Z7を投入したが、そのスペックが見劣りしたため、落胆を生み、ソニー人気を加速させる皮肉な結果となった。
EOS RPは発売当初、格別安さを感じない上に、ボディに似合うコンパクトな純正レンズは「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」しか見当たらなかった。
このため、当時は興味を持てなかったが、価格が2/3まで下落した現在、コストパフォーマンスに優れたフルサイズとして再評価すべきではないかと感じたのである。
EOS RPのサイズをSONYα7CやLeica M10-Pと比較
EOS RP最大の特徴は440gという小型軽量なことである。
しかし、ソニーも2020年10月、ファインダー搭載のフルサイズとしては世界最軽量と銘打ってα7Cを発売している。
早速、その双方を並べてみた。
ほぼ同じサイズ感だ。
両機のスペック比較はしないが、α7Cは手振れ補正が搭載され、動画性能も優れている。ただ、価格は20万円前後。コストパフォーマンスのEOS RPか、トータルバランスのα7Cか、という選択になる。
次は、Leica M10-Pとのサイズ比較である。
ややEOS RPの方が横幅が小さい。Leica M10-Pはスナップ向きのカメラだが、上記写真を見てEOS RPも改めてスナップ向きの機種だと感じた。軽量コンパクトなうえに軍艦部の出っ張りも少ないのでカメラバックの収納も楽だった。
ただ、カメラはレンズも一緒に考える必要がある。
ボディがコンパクトでもレンズが巨大では本末転倒だ。キヤノンのRFマウントに軽量コンパクトなレンズはあるのか?
私が選んだレンズと、その作例を紹介したい。
RFマウントの弱点は軽量コンパクトなレンズの少なさ!私のレンズ選択
大きく重く高価なRFマウントの中で異彩を放つ「RF 50mm F1.8 STM」(作例)
キヤノンやニコンのミラーレスに共通する課題はレンズの種類、ラインナップである。
ミラーレス歴の長いソニーならば、純正レンズは豊富だ。シグマやタムロンといったサードパーティからは安くて小さくて魅力的なレンズも数多く発売され、選択に迷う楽しさもある。
一方、キヤノンのRFマウントは、まだ大きく重く高額なレンズが大半だ。
そんな中で、ひときわ異彩を放つレンズが2020年11月に発売された「RF 50mm F1.8 STM」である。
重さ160g、最短30センチまで寄れる。価格は2万5000円前後。いわゆる”撒き餌レンズ”である。
このサイズ感と重さならば、EOS RPの小型軽量をスポイルしない。160gなので、私はボディキャップ代わりに常時装着している。正直言って、このレンズが発売されたが故にEOS RPを購入候補に入れたと言っても過言ではない。
肝心の描写力だが、普通によく写る。みんな大好き「bokeh」も悪くない。
撮影者:EOS RP + RF 50mm F1.8 STM
撮影補助:さきょう
F7.1への挑戦に好奇心!395gの「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」(作例)
「キヤノンは面白いメーカーだ」と思ったことがある。
最近のミラーレスは高感度耐性が向上し、ISO6400や10000程度に上げてもノイズが気にならないレベルまで技術が進化した。一方で、レンズはF値の明るい大口径を追求するあまり、依然として、大きく重く高価なものが闊歩しているのが実情だ。
そんな中で、キヤノンがカメラボディの性能向上を念頭に、F値は暗くても軽くて安いレンズにチャレンジしたのが、395gの「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」だと想像している。価格は6万円前後。安くてもレンズには5段分の手振れ補正も搭載している。
私の場合、ズームレンズは保険の意味も込めてカメラバックに忍ばせておく類(たぐい)のレンズだ。それゆえ、小型軽量で安いことに越したことはない。
一方、F4通しのLレンズ「RF24-105mm F4 L IS USM」は重さ700g、価格は15万円前後である。重さは300g増、価格は9万円ほど高額になる。
「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」は、”ニコ爺”ならぬ”キャノ爺”から「そんな暗黒レンズではまともな写真は撮れんよ」とお叱りを受けかねないF値だが、実際、描写はどうなのか?
俄然、このレンズに好奇心が湧いてきた。望遠端F7.1に吸い込まれるように購入した。
このレンズは単品より、ボディとセットのレンズキットで購入した方が断然安い。私はセットで購入した。
では、その描写力をご覧いただきたい。
撮影者:EOS RP + RF24-105mm F4-7.1 IS STM
撮影補助:さきょう
撮影を終えて
いかがだったろうか。
まず、EOS RPボディだが、コンパクトでありながらグリップが握りやすい。さすが伝統的カメラメーカーのプロダクトだけはあると感じた。
AFはさほど期待していなかったのだが、文句なし。歩留まりは非常に高かった。私はさほど使用しないが、瞳AFもある。
背面モニターはタッチパネル方式で反応も早い。指先でAFポイントを瞬時に移動できる。機能モリモリではないが、10万円のフルサイズにしては充実していると感じた。また、キヤノンといえば、淡い色合いをイメージしていたが、想像以上に色乗りも良かった。やはり、カメラ機材は自分で撮影してみないと分からないものだ。
このカメラはプロのカメラマンもサブ機に使いたいモデルではないかと感じた。
EOS RPは発売当初、パッとしない印象だったが、キャッシュバックの影響もあるのだろうか、マップカメラの6月販売ランキングで2位に躍進した。発売後2年以上も経て、これほど上位に飛躍した機種も珍しい。一般ユーザーはコストパフォーマンスを重視していることが分かる。趣味の道具は限られた小遣いから購入するのだから当然である。
次にレンズだが、”撒き餌”と呼ばれるレンズは、ある意味、メーカーの顔でもある。それゆえ、通常、普通に良く写るのものだが、「RF 50mm F1.8 STM」も例外ではなかった。このレンズ1本でスナップしても全く問題ないとも思った。
もう一本の「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」は、可能な限り、望遠端のF7.1で撮影した。その代わり、ISO感度は3200以上まで上げて撮影した。写真を見ても分かる通り、ノイズもなく満足な表現力だった。歪曲収差を心配したが、jpegで撮影する限り、収差補正がしっかり効いているようだ。
最後に、先ほど申し上げたRFマウントに軽量コンパクトなレンズが少ない点に言及したい。
RFレンズを選択する際、EOS RPに似合いそうな小さくて安いレンズの選択肢があまりに少ないことを痛切に感じた。RFマウントはサードパーティのレンズも少ない。現状では、重く大きく高価なレンズ沼に飛び込めと言わんばかりのラインナップである。
ただ、それならそれで考えようがある。ミラーレスの特徴は純正以外にマウントアダプターを介して他メーカーのレンズを容易に使用できる点だ。
EOS RPも例外ではなく、MFレンズのピントの山を掴みやすいファインダーとピーキングを備えている。これを利用しない手はない。
低コストでEOS RPのレンズを充実させる方法
私はEOS RPと同時に購入したものがある。
それはMマウントレンズをRFマウントに変換するアダプターである。これを使えば、ライカやコシナのレンズをRPで使用することができる。
しかもマウント変換アダプターはネットで5000円ほどで手に入る。
EOS RPはボディがコンパクトなため、小さなレンズが実によく似合った。
まずは和製ズミクロンと呼ばれる「Voigtländer ULTRON vintage line 35mm F2 Aspherical」。
広角レンズも使用したい。21㎜の「Voigtlander COLOR-SKOPAR 21mm F3.5 Aspherical Vintage Line」もまたRPにはぴったりのデザインだった。実に見栄えがいい。
明るいレンズが必要なときはf1.4の「NOKTON classic 35mm F1.4 II VM」もある。シングルコートのSCと、ダブルコートのMCがあるが、価格は変わらない。
まるで、EOS RPのファッションショーのようになってしまった。しかし、変換アダプターを利用することで、RPはLeica M10-Pに負けない男前な姿に変身した。
趣味カメラはメーカーの枠を超えて自由に楽しみたい。まさに「もっと自由に」である。
今回の作例で使用した義材は次の通り。
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