D850はニコン最後の高画素一眼レフになるかもしれない
「頑張れ!ニコン」の思いも込めてD850を購入した
今年4月、ニコンが年内に一眼レフカメラ本体の国内生産を終了すると報じられた。本当だとすれば、70年以上続いた国内生産の幕が下りることになる。
若い頃、ニコン機で仕事を始め、カメラや写真のノウハウを学んだ私にとって、あのニコンが国内生産を終了するというのはひとつの時代が終わったような気分でもある。
というわけで、先日、ニコンD850を購入した。以前から気になっていた機種である。Zマウントのミラーレスのデザインは「じゃない感」を拭えないが、D一桁機と高画素のD850はニコンの本気が詰まっている。
スナップ用途に一桁機は似合わないので、D850を購入し、撮影に使用してみた。今回はD850の使用感、その際使用したニッコールレンズに改めて学んだこと、そして作例をご紹介したい。
まず、最初に感じたのは、D850は長年一眼レフ機を開発・生産してきたニコンのプライドが詰まったような機種だった。
ニコンD850とペンタックスK-1 MarkⅡの比較・サイズ感とスペック
私はすでにPENTAXのフルサイズK-1 MarkⅡのユーザーである。この機種は有効3640万画素。画質的には十分に高精細でゆとりがある。
すでに何度か、その画質の素晴らしさを当ブログでお伝えているので、ご関心のある方はそちらもご覧いただきたい。
今回購入したD850は有効4575万画素。最近は6000万画素のミラーレスSONYα7RⅣや、富士フイルムから1億画素の中判GFX100Sが発売されているが、レフ機の中では最も高画素機となる。
というわけで、私が所有するD850とK-1 MarkⅡを並べてサイズを比較してみた。
ご覧のように、D850の方が堂々たる姿である。ただ、重さはどちらもバッテリーなど含めて約1kgとさほど変わらない。
スナップに似合う、お気に入りの単焦点レンズ(AF-S NIKKOR 50mm f/1.8 G、SMC FA 43mmF1.9 Limited)を装着した重さもまた、D850が1230g、K-1 MarkⅡは1180gとほぼ一緒だ。
では、双方のスペックを比較してみたい。
PENTAX K-1 MarkⅡ | Nikon D850 | |
発売日 | 2018年4月 | 2017年9月 |
撮像素子 | フルサイズ CMOS | フルサイズ CMOS |
有効画素数 | 3640万画素 | 4575万画素 |
連射性能 | 最高約4.4コマ/秒 | 最高約7コマ/秒 |
撮影感度 | 標準:ISO 100~819200 | 標準:ISO 64〜25600 |
ファインダー倍率 | 0.7倍(視野率約100%) | 0.75倍(視野率約100%) |
5軸手振れ補正 | ○ | なし(レンズ側で対応) |
液晶モニター | フレキシブルチルト式・3.2型(インチ) 103.7万ドット |
チルト式・3.2型(インチ) 236万ドット |
ライブビュー | ○ | ○ |
AFセンサー測距点 | 33点(中央25点はクロスタイプ) | フォーカスポイント153点(選択可能55点)・クロスタイプセンサー99点(選択可能35点) |
動画 | Full HD | 4K |
幅x高さx奥行き | 136.5x110x85.5 mm | 146x124x78.5 mm |
重量(バッテリー等含む) | 1010g(本体のみ925g) | 1005g (本体のみ915g ) |
価格 | 22万1000円 | 33万4060円 |
価格はマップカメラの新品相場。中古はK-1 MarkⅡが16万円前後、D850は22〜25万円。 |
両機種の違いは、まず、手振れ補正の考え方である。
K-1はボディ内手振れ補正を搭載している。一方、D850はレンズ側の手振れ補正で対応という方式を採用している。
次に、ファインダー倍率はK-1が0.7倍に対し、D850は0.75倍。被写体がより大きく見える。
ちなみに、名機F3はハイアイポイントファインダー装着時0.75倍、私が使用しているアイレベルファインダーは0.8倍だ。F3のピントが合わせやすいのはファインダー倍率が大きいことも要因となっている。
そのほか、AFセンサーの測距点や連射性能、液晶モニターのドット数、動画の画質はD850が優れていて、このあたりは価格なりの差なのかもしれない。
ただ、スナップや静止画使用において速射性能はあまり関係のないスペックだ。私はスナップにK-1 MarkⅡを多用しているが、全く不満点はない。
では、D850の描写力はどうなのだろうか?
高画素機D850で撮影する際の留意点と作例
D850のスナップ使用は軽量な単焦点と安価なズームレンズが最適
言うまでもなく、カメラはレンズとセットで考え、システムを組む必要がある。
私がD850を使用するのは野鳥やスポーツ撮影でもなければ、広告写真を撮影するためでもない。スナップ用途だ。
だから、できるだけ軽量コンパクトで、振り回しやすく、普通に写るレンズで良いのである。
そういう軸を決めてレンズを選定したわけだが、単焦点は軽くて安いf1.8シリーズや、フィルム時代の小ぶりなAFレンズから選んだ。
- Ai AF NIKKOR 35mm f2 D
- Ai AF NIKKOR 50mm f1.4
- AF-S NIKKOR 50mm f1.8 G
- AF-S NIKKOR 85mm f1.8 G
ズームレンズは旅行や普段使いを想定して軽量コンパクトさとズーム倍率を重視。多用しないレンズなのでコストも意識した。さらに、AFの速度・精度も考え、比較的、発売日の新しいものを選んだ。
- AF-S NIKKOR 24-120mm F4G ED VR(710g・2010年9月発売)
- AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR(680g・2017年7月発売)
以上が、私が選んだD850システムである。
つまり、1本だけで1kgを超えるような重く大きく高価な大三元レンズは避けることにした。私の用途には不要と考えたからだ。単焦点は、他にも気になるレンズはあるが、それは徐々に検討していきたいと思う。
いよいよ撮影である。
D850に廉価な単焦点レンズで撮影(作例)
この日の撮影に持ち出したレンズは、次の3本。これで合計1kgほどの重量だ。
- Ai AF NIKKOR 35mm f2 D
- AF-S NIKKOR 50mm f1.8 G
- AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR
まずは単焦点AF-S NIKKOR 50mm f1.8 Gで撮影した写真をご覧いただきたい。なお、今回の写真はJPEGで撮影し、明るさだけを調整した。
全体的に「AF-S NIKKOR 50mm f1.8 G」はクリアで上品な表現だと感じた。D850の高画素を引き立てる高精細な表現だった。
次は、フィルム時代に生産された単焦点「Ai AF NIKKOR 35mm f2 D」で撮影した。
さきほどのGレンズと違って、Dレンズは絞り環がある。このため、D850だけでなく私が愛用するF3でも普通に使用できる。融通性に優れたレンズだ。
1995年発売の「Ai AF NIKKOR 35mm f2 D」はAFの精度こそGレンズには劣るが、写真の仕上がりに問題はなかった。むしろ空の色を比べたら色乗りの良さを感じた。
絵作り的には、線の太さがライカの初代Summicron 35mm F2、いわゆる8枚玉に似ているように感じた。
D850のスナップ撮影に小型軽量な望遠ズームも面白い(作例)
コロナ禍以降、ソーシャルディスタンスが意識されるようになった。同時に、スナップも道ゆく人たちとの距離感を考慮して、中望遠寄りの単焦点や望遠ズームを多用するようになった。
もともと私は「単焦点1本で勝負」派だった。
スナップ用途に望遠ズームも使用することで、多様な画角に新たな面白さを感じている。単焦点にこだわるのもいいが、マンネリに陥った方には望遠ズームもおすすめだ。
というわけで、680gと小型軽量でAFも速いと評判の「AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR」で撮影した。
ニコ爺には「f2.8通しの望遠ズームじゃないとD850の性能が引き出せないよ」と注意されるかもしれないが、なかなかどうして、この望遠ズームの描写力は侮れないと感じた。
まるでマクロのような表現力も「AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR」の面白さかもしれない。
最後に、穏やかで光り輝く目黒川沿いの光景をお楽しみください。