ボディにチタン採用で高級感を増したX-Pro3
軽量で高強度なチタン採用!ブラックは税抜き21万円台か?
富士フイルムは10月23日、レンジファインダー型カメラX-Pro2の後継機種X-Pro3を正式発表し、11月28日から順次発売することを明らかにしました。
最大の特徴は、富士フイルムがデジタルカメラに初採用した軽量で高強度なチタンの採用です。デバイスを守るフレームにはマグネシウムを使用し、手に触れるトップカバーとベースプレートには耐食性に優れたチタンを採用しました。
チタン独特の美しさに加え、ボディ70ヶ所にシーリングを施した「-10℃~+40℃」の過酷な環境下でも撮影可能な防滴・防塵性能を身に纏(まと)っています。
X-Pro3のカラーはブラックペイント、DRブラック、DRシルバーの3色。
ブラックペイントはチタンカバーに半ツヤ塗装。DRブラックとDRシルバーは傷からカメラを守る表面加工技術(デュラテクトTM)が施され、なめらかな手触りと高い硬度を実現しました。
ブラックは11月28日から、DRブラックとDRシルバーは12月中旬に発売される予定です。
店頭価格(税別)はブラックが21万4,500円前後、DRブラックとDRシルバーがそれぞれ23万9500円前後とみられています。
私がX-Pro3を待ち望んでいた理由とは?
X-Proシリーズは、光学ファインダー(OVF)と電子ビューファインダー(EVF)を簡単に切り替えられる点が最大の特徴です。
この独特の機能で、X-Proシリーズはレンジファインダー(距離計連動式)を採用したM型ライカ(下記写真参考)のようなスタイルになっているため、内外に根強いファンを持つ特異な機種でもあります。
私も昨年暮れ頃から、ライカM10ブラックルロームのサブカメラとしてX-Pro2の購入を考えました。
ただ、富士フイルム関係者から今年秋には後継機が発売される予定だと聞き、X-Pro3の発表を楽しみに待っていました。
ただ、後ほど詳しく触れますが、液晶モニターを閉じて隠すという新コンセプトだと知り、正直、驚きました。
「ずいぶん思い切ったことをするものだ」と思うと同時に、「これはユーザーの評価が相当分かれそうだ」とも感じました。
今回の正式発表で、新コンセプトは現実のものとなったわけですが、富士フイルムファンの一人として、X-Pro3は何なのか?じっくり考えてみたいと思います。
X-Pro3の基本性能はX-T3と同等の高スペック
X-T3やX-T30と同じセンサーと高速画像処理エンジンを採用
カメラの基本性能から見ていきましょう。
センサーと画像処理エンジンは、X-T3やX-T30に搭載された第4世代の裏面照射型2610万画素「X-Trans™ CMOS 4」センサーと高速画像処理エンジン「X-Processor 4」が搭載されました。
ですから、AF性能や画像処理は基本的にX-T3やT30と同水準ということになります。
ファインダー関連の進化は次の通り。
- EVFには高解像約369万ドットの有機ELパネルを新たに採用。暗い部分や明るい部分もEVF上で精緻に映し出すことが可能。忠実な色再現性を備えて高い視認性を発揮
- EVFの表示設定として「残像感低減」モードを新たに追加。残像感を抑えた約200フレーム/秒相当の滑らかなEVFの視界を実現
- 「ハイダイナミックレンジ(HDR)撮影」機能で、明るさの異なる複数の画像を合成。白飛びや黒つぶれの少ない自然な色の写真が可能
- アルゴリズムを進化させることで、暗闇に近い低照度-6EVの環境下でも高速・高精度な位相差AFを実現
センサーとが画像処理エンジンがX-T3やT30と同じなので、APS-Cカメラの中では最上位クラスの基本性能です。
X-T3とX-T30は私も使用していますが、ほぼ不満のない性能です。
きっと、X-Pro3も贅沢な撮影環境を与えてくれるはずです。
写真撮影の喜びを高めるスペックアップ
次に、絵作り関連の進化をみてましょう。
- 「多重露出撮影」機能をさらに進化。異なるフレーミング・時間で撮影した写真を最大9枚重ね合わせて1枚の作品につくりあげることができる
- 「フィルムシミュレーション」にカラーネガフィルムをもとに画質設計した「クラシックネガ」モードを新たに追加。高コントラストで立体感溢れる表現が可能
- 「FUJIFILM X-T3」「FUJIFILM X-T30」に搭載している「モノクロ調整」機能を「モノクロームカラー」として刷新。従来の暖色系・寒色系にマゼンタ系やグリーン系を新たに追加。幅広いカラーグラデーションから選択できる
- フィルムで撮った写真が持つ独特の粒状感を再現する「グレイン・エフェクト」機能を一層進化させ、「強度」「粒度」の設定を変更することでグレインの濃さ・粗さを調整できる
- 従来の「カラークローム・エフェクト」に加え、新たに「カラークロームブルー」を搭載。青空などブルー系の被写体に対して深みのある色再現・階調再現が可能となる
全体的に撮影する喜びや感動、探究心に繋がる進化に力を入れた印象です。
X-Pro3といえども、いざという時は動画性能も重要です。
先代はフルHDでした。X-Pro3は4K動画が29.97p/25p/24p/23.98pで撮影可能で、連続撮影時間は最大約15分となっています。
ただ、X-Pro3が他のカメラと大きく異なるのは、見た目の美しさと独特の液晶モニターであることは間違いありません。
液晶モニターを隠す意味は何なのか?
X-Pro3は液晶モニターを背面内側に格納する方式を採用した!
今回のX-Pro3で最も好みが分かれそうなのが、約162万ドットの液晶モニターです。
180度下方チルト式ですが、普段は本体背面の内側に格納する特異な方式を採用しました。
image:富士フイルム公式サイト |
その代わり、背面には1.28インチの小さな液晶モニターが用意され、電源のON/OFFに関わらず、ISO感度など撮影情報を確認することができます。
X-H1の右上にある小さなモノクロ液晶モニターのカラー版という感じです。
富士フイルムのニュースリリースには「被写体と出会いファインダーを覗いて高画質な写真を撮影する、写真撮影の原点“PURE PHOTOGRAPHY”を追求」と書かれています。
「ファインダーを覗いて撮影に没頭してほしい」
そんなメッセージの具体的な提案が液晶モニターの背面内側への格納だったのかもしれません。
液晶モニターをなくしたライカM-Dがモチーフか?
X-Pro3から、ライカファンなら連想するカメラがあるはずです。
「ライカ M-D(Typ 262)」
背面のモニターを失くして撮影に集中できるカメラを目指した機種です。
image:Leicaオンラインストア |
ライカ M-Dは、液晶モニターをなくし、カメラ背面にはフィルム感度ダイヤルを連想させる露出補正用の機械式ダイヤルが配置されています。
こんなにシンプルなデジタルカメラなのに税込み110万円。まさにライカ的価格です。
私もかつて仕事にフイルムカメラを使用していましたが、当時は現像してみないと、どんな写真が撮影できたのか分からない時代でした。
それがデジタル時代になって撮影前に液晶モニターで撮影画像が想定でき、撮影した直後もすぐに確認することができるようになりました。
液晶モニターをなくしたライカ M-Dは、フィルム時代の撮影感覚を彷彿とさせるカメラでもあります。
X-Pro3もライカの引き算の美学を参考にしたものとみられますが、X-Pro3購入のために貯金したものの内容を知って購入を見送り、他メーカーのカメラを購入したというブログやコメントも見受けられます。
X-Pro3の大胆な提案は、一般ユーザーの間で賛否が大きく分かれています。
「液晶モニター格納=撮影に没頭できる」なのか?
X-Pro3はAPS-Cにしてはやや高額な趣味性の高いトンがったカメラなのかもしれません。
アナログ時代の郷愁として、一見、フィルムカメラのようなシンプルな背面にした意図も分からないではありません。
ただ、私は今回、X-Pro3の購入は様子見したいと思います。
ノーマルなX-Pro2に中古も含めて価格的な魅力を感じ始めているためです。
せめて、手ぶれ補正かバリアングルのいずれかを搭載して欲しかったですね。
今後は、富士フイルムの技術を総動員してX100Fの後継機にバリアングル(180度チルド)やボディ内手ぶれ補正が搭載されることを期待したいと思います。
私が最も理解できないのは、液晶モニターを背面内側に格納することが撮影に没頭できることなのかという点です。
むしろ、ボディー内手ぶれ補正を搭載してバリアングルにした方が、下位置などあらゆる角度から撮影でき、それこそストレスや不安なしに撮影に没頭できるはずです。
とくに、X-Pro3は多くのユーザーが手持ち撮影を想定したカメラです。
オリンパスのPEN-Fのように小型軽量なボディに手ぶれ補正とバリアングルを搭載した方がユーザーフレンドリーではないかとも感じます。
X-Pro3が消費者にどこまで受け入れられるのか?
大ヒットしたらミラーレスカメラの新たな潮流を作り出す可能性を秘めた機種なのかもしれません。