オリンパスといえば、センサーサイズがフルサイズやAPS-Cよりも小さいマイクロフォーサーズを採用している代表的カメラメーカーです。
センサーサイズが小さければ、カメラ本体やレンズを小型化することもできます。
オリンパスのカメラは小型軽量であるだけでなく、手ブレ補正が強力で、自撮りだけでなく、あらゆる角度で撮影に便利なバリアングルを採用したカメラが多く、私の物欲を刺激するメーカーでもあります。
そのオリンパスが、新型OM-D E-M5 Mark IIIを発表しました。発売は11月下旬を予定しているということです。
今回は新型OM-D E-M5 Mark IIIのスペックや価格を分析しつつ、理想的なスナップ用カメラの条件や、私がいま魅力を感じるカメラを考えたいと思います。
「OM-D E-M5 Mark III」は手持ち撮影カメラの理想形
小型軽量で美しいフォルムのボディー
「OM-D E-M5 Mark III」は、OLYMPUSの中では、プロユースを想定した「OM-D E-M1X」や「OM-D E-M1 Mark II」に次ぐ中級機といった位置付けですが、スタイリングはOM-Dシリーズの中では最も端正です。(上記写真参考)
上部の軍艦部分もメカメカしくクラシカルなデザインは男心?をくすぐります。(もしかして女心もくすぐるかもしれません)
スペック以前に、このデザインに魅せられて購入する人がいるかもしれないと思うほどです。
次に、スペックを見ていきます。
小型軽量、手ぶれ補正、バリアングル!三拍子が揃ったスナップカメラ
私が注目する主な特徴をピックアップします。
- 本体重量366g。防塵・防滴。-10℃耐低温設計
- ボディー内5軸手ぶれ補正を搭載
- バリアングル液晶モニター
先代E-M5 Mark IIより重量は約50g軽量化しています。
とかくスペックアップすると重量は重くなりがちですが、全体重量の10%以上となる50g減量は立派です。
さらに、小型軽量でありながら、防滴・防塵に加えて、マイナス10度でも耐えられる設計のため、過酷な環境下でも撮影できるモデルとなっています。
もうひとつ重要なのはボディー内手ぶれ補正をさらに強化したという点です。
先代「E-M5 Mark II」は5段分の手ぶれ補正でしたが、「E-M5 Mark III」はレンズによっては最大約5.5段の手ぶれ補正性能を実現しました。(M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO使用時)
スナップ撮影は手持ち撮影がほとんどですから、小型軽量とボディ内手ぶれ補正はとても重要です。
さらに、「E-M5 Mark III」は液晶モニターがバリアングルですから、あらゆる位置や角度の撮影でも被写体を確認することができます。
スナップ用のカメラといえば、小型軽量なシステムが可能なフジフイルムも人気ですが、OLYMPUSは強力なボディー内手ぶれ補正とバリンアングル搭載という点では2〜3歩先を走っています。
なお、「E-M5 Mark III」はAF性能や画質でも正常進化していますが、その辺の詳しいスペックは、OLYMPUSの公式サイトで確認してください。
動画撮影にも手ぶれ補正性能は極めて有効
最近のミラーレスカメラは、スマホに負けず、静止画だけでなく動画性能も向上しました。
普通の人は静止画用と動画用のカメラを2台持って散歩しないものです。
ですから、静止画・動画双方の機能が優れているかどうかがカメラ選びの際に重要なポイントです。
その動画性能の良し悪しを左右するのは、第一に手ぶれ補正性能が備わっているか否かが最大の分かれ目となります。
いくら美しい4K動画が撮れたとしても、手ぶれ映像ならば、画面酔いを引き起こし、健康被害の原因ともなりかねません。
その点、「E-M5 Mark III」は、4K30pなど4K動画記録に対応していますが、5軸手ぶれ補正に、動画専用の電子手ぶれ補正も組み合わせた撮影が可能で、手持ち撮影でも高品質な動画を記録することができます。
さらに、動画の連続撮影時間は約1時間50分。30分ごとにファイルは別になりますが、これだけ連続撮影できたら十分です。
「E-M5 Mark III」は動画にも強いカメラといえます。
OLYMPUSの基本理念が詰め込まれたカメラが「E-M5 Mark III」
OLYMPUSが手持ち撮影にこだわる理由とは?
軽量コンパクトでボディー内手ぶれ補正、そして自撮りも可能なバリアングル。
「OM-D E-M5 Mark III」は手持ち撮影に必要な要素を全て盛り込んだカメラです。
では、OLYMPUSはなぜ、手持ち撮影にこだわっているのでしょうか?
今年9月、オリンパスの執行役員・杉本繁実氏が日刊工業新聞のインタビューで次のように語りました。
―手持ち撮影にこだわっています。
「機動力や手ブレ補正が優れていると、野鳥や電車の撮影、運動会など三脚を使えない場面で真価を発揮する。三脚がなくても被写体をよく捉えられるシステムは、それだけ撮影の自由度が高い。他社製品では撮れない写真を提供できる」(出典:日刊工業新聞)
三脚がなくても被写体をよく捉えられるシステムは、確かに撮影の自由度を高めるのは間違いありません。
スマホの普及で、かつてフィルム時代には考えられなかったほど、いまや「1億総カメラマン時代」となっています。
スマホがあれば静止画も動画も手軽に撮影でき、その撮影体験がカメラへの関心の入り口になるはずです。
そんな時代なのにカメラメーカーが苦戦しているのは皮肉な現象です。
なぜか?
人々がスマホで手軽に手持ち撮影する時代なのに、カメラメーカーは長時間手持ちできない重くて大きく高価なカメラやレンズの開発競争に明け暮れているからです。
その意味では、杉本氏の言う「三脚がなくても被写体をよく捉えられるシステムは、それだけ撮影の自由度が高い。他社製品では撮れない写真を提供できる」という方向性は間違っていません。
むしろ、その通りです。
オリンパス「OM-D E-M5 Mark III」の唯一の欠点は価格
しかし、今回発表された「OM-D E-M5 Mark III」は、価格が唯一の欠点になるかもしれません。
価格.comの最安値(10月21日現在)を見ると、ボディー単体で14万6510円、レンズキットが17万6210円(「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II」付属)という水準です。
マイクロフォーザーズとはいえ、これだけの小型軽量なボディーに強力な手ぶれ補正や防滴防塵、そしてバリアングル搭載ですから、OLYMPUSにとっては当然の値付けかもしれません。
しかし、消費者は「少しお金を足せばフルサイズが買える」と思いそうな価格帯でもあるのです。
OM-D E-M5 Mark III | EOS R | α7Ⅲ |
14万6510円 | 16万8861円 | 18万8000円 |
キヤノンのフルサイズEOS Rは発売から1年余りたったとはいえ、その価格差は2万円ほど。ソニーのα7Ⅲも4万円ほど追加すれば買えてしまいます。
一方、スマートフォンと比べてどうか?
iPhone11 Proは超広角など3眼レンズが思いの外、消費者に受け入れられ、アップルは今年、増産を予定していると報じられました。
そのiPhone11 Proは確かに旧型に比べてカメラ機能が格段に向上しました。では、価格はどうか?
iPhone11 | iPhone11 Pro | iPhone11 Pro Max |
74,800円(税別)から | 106,800円(税別)から | 119,800円(税別) |
望遠なしのiPhone11は税込み8万円ほどから、3眼の11Proは12万円ほどからの価格帯です。
ただ、iPhoneはカメラ機能以外にも通話・通信など多機能ですから、カメラは割高だと感じる人もいるかもしれません。
「OM-D E-M5 Mark III」は、発売後、価格がこなれてきてからが勝負のカメラと言う感じがしています。
最後にOLYMPUSへの期待
いま、私が最も美しいと感じているカメラがあります。
それはOLYMPUSのレンジファインダースタイルカメラ「PEN-F」です。
ライカの最上位機種M10は素晴らしいフォルムですが、PEN-Fは勝るとも劣らないフォルムです。
しかも、重量約370gの小型軽量、ボディー内手ぶれ補正、バリアングルの液晶モニター、まさにスナップに必要な三拍子が揃ったカメラでもあります。
先日、「OM-D E-M5 Mark III」と同時に「OLYMPUS PEN E-PL10」(市場価格約7万7000円)が発表されましたが、やはり待望するのは新型PEN-Fの登場です。
現行PEN-Fは2016年2月に発売され、3年以上を経過しました。現行機種は製造が止まっているのか、中古が高値で取引されています。
最近は、どのカメラも写りは良く、機能・性能という点では、ほぼ行き着くところまで来たような気がします。
今後は最新技術の競争だけでなく、スタイリングや質感を競うステージに移りつつあります。
最近、高価なライカQ2などの売れ行きを見ていると、最新技術を競い合う汎用カメラとは別に、多少高価でも所有欲を満たす趣味性の強いカメラが求められる時代なのかもしれません。
近々発表されるフジフィルムのX-Pro3は、その文脈上にある機種かもしれません。
その意味では、新型PEN-Fが光る時代が到来しました。
最新技術を詰め込んだ新型PEN-Fを待望しているのは私だけでしょうか?
PEN-FはM型ライカのように歴史的ストーリーのあるカメラだけに、オリンパスには使命感を持って作り続けて欲しいと心から願っています。
新型が登場した暁には、私は間違いなく注文するつもりです。