2020年はカメラ業界の衰退が可視化された1年だった
カメラやレンズの性能は大幅向上したが・・・・
2020年もあと数日で終わる。
今年は1月にマカオを旅行したあと、1月下旬、中国でコロナ問題が発覚。5月に予定していたパリ長期滞在は中止。とうとう年末までコロナ問題がニュースの中心を占める年となった。
一時はスナップ撮影に出かけるのも憚れるほど「外出自粛」「STAY HOME」が推奨されたが、そのおかげで、かつてないほどカメラやレンズを買い込んだ1年でもあった。
今回は、私が個人的に使用してスナップに最適なカメラはどれだったのか記したいと思う。
その前に、カメラ業界、さらに業界を取り巻く情勢が急変したことに触れておきたい。
まず、カメラ業界は大手各社ともミラーレスに完全に舵を切った。どのカメラも性能が向上し、手振れ補正の搭載は当たり前。AFは瞳では飽き足らず、動物や鳥を正確に追い続けるものまで登場した。
レンズもF値1.2や0.95といった大口径が話題となり、解像感やボケの量や大きさ、美しさを競っている。
その結果、何が起きたのか?
日常使いできないほど巨大なカメラとレンズの量産である。
使いもしない機能をモリモリに詰め込み、カバンが歪みそうな重さのプロ機を素人に買わせる商法が横行している。
もともとミラーレスは小型軽量が期待されたわけだが、最近のミラーレスカメラとレンズのシステムは一眼レフ機のミラーレス版といった風情で、大きく、重く、そして高い。
大きくすればプロ機のような目映えとなるから、価格も釣り上げやすいと思っているのだろうか。使いもしない機能や性能が価格と重量を押し上げる。連続撮影時間が短く不完全とも思える8K動画機能も搭載し、45万円という高額機種まで登場した1年でもあった。
スチール性能は抜群なのだから「なぜ4Kにとどめて消費者の懐を守ろうとしないのだろうか?」と思ったが、大手メーカーも生き残りのために、消費者から、いかにお金を引っ張るのか躍起なのかもしれない。
これまで以上に消費者はカメラリテラシーが必要な時代になった。
メーカーに忖度なし!「間違いだらけのカメラ選び」は毎年続いて欲しい
カメラは極めてマニアックな趣味的道具だ。
コロナ禍による給料カットや失業で生活が苦しくなれば、なくても生きていけるものから排除されるのが世の常。カメラはその最たるものだ。
日常的な撮影はスマホがあれば十分。カメラ以上に進化が激しいスマホは多くの家庭や個人を取り込み、カメラ機材の売り上げは激減した。メーカーの広告出稿量も減少し、今年はとうとうカメラ誌にも寒風が吹き荒れた。「月刊カメラマン」「アサヒカメラ」が休刊し、メジャーなカメラ写真雑誌は数える程となった。
そんななか、ひとつ朗報がある。
「月刊カメラマン」は休刊となったが、昨年末に発売されて大きな話題となった「激論!間違いだらけのカメラ選び!!」が12月22日にムックとして発売された。(ムックとは雑誌と書籍をあわせた性格を持つ刊行物)
前回、メーカーに忖度なしで写真家たちのカメラ批評を記事化し出版した。その感動が蘇り、私は2020〜2021年版を予約し、12月22日に到着した。内容は相変わらず、痛快であった。
今回の「激論!間違いだらけのカメラ選び!!」には3社が広告を出稿している。ニコン、フジフイルム、シグマである。キヤノンには広告を断られたという。
なぜ、業界の雄キヤノンは広告を断ったのか?
前回の「間違いだらけ」で、プロ写真家たちがキヤノンのカメラやレンズを痛烈に批判したためなのか?もし、そうだとしたら、相当、了見の狭い話だ。
逆に、今回、感心したのはフジフィルムの対応だ。
フジは広告を出稿したにもかかわらず、同社の誇るPro3などが相当な辛口で批評されていた。しかし、上野隆・営業グループ総括マネージャーが紙面に登場し、プロの座談会で噴出した批判や疑問にひとつひとつ丁寧に答え、最後に次のように語っていたのが印象的だった。
今年も皆さん本当に言いたい放題言ってくれちゃいましたね。まぁ、この時代に有料の紙媒体で発信する記事なのですから、個人的にはこのくらいの本音トークで良いのではないかと思います。メーカーに忖度した記事なんて誰も読みたくないでしょうし。ただ、その代わりこちらの意見もちゃんと言わせていただきました。
上野氏ですら、「メーカーに忖度した記事なんて誰も読みたくない」と明言しているのだ。
しかし、昨今のユーチューブ上では、ステマかと思うほどの忖度を感じる。メーカーは経営が厳しくなればなるほど監視の目を強めているのか?それともユーチューバーが勝手に忖度しているのか?
そんな時代だからこそ、忖度なしのカメラ誌「激論!間違いだらけのカメラ選び!!」は応援したい。批判あるところに、発展と進歩があるからだ。
ただ、「激論!間違いだらけ」は購読料収入が頼りのようだ。このシリーズを存続させ、健全なカメラ文化を守りたい人はぜひ購入し読んで欲しい。
というわけで、前置きは、このくらいにして、私がスナップ撮影に最適だと感じたカメラを発表したい。
カメラはデザインとサイズ感が命だ!
性能は飽和状態!趣味カメラはデザインとサイズ感で選ぼう!
正直なところ、私はカメラを選ぶ際、マニュアルフォーカス(MF)のM型ライカを除いて、オートフォーカス(AF)が早くて正確であれば、あとはデザイン性だけで選んでも後悔はないと考えている。
AFがバカだと、撮影後の歩留まりは悪化する。マニュアルフォーカスなら、ピンボケでも自分の責任、諦めもつく。しかし、オートフォカス(AF)はそうはいかない。癒しのための趣味カメラが新たなストレス製造機と化してしまう。
その点では、ソニーのカメラはこの2年ほど前から発売された機種であれば、安心して購入することができる。私の所有するなかではα7R3が最も古い機種となるが、AFに不満を感じたことはない。
もうひとつ大切なのは、カメラは外に持ち出すのだから洋服と一緒、デザインが重要だ。武器のような大きく重そうなカメラをぶら下げて、街ゆく人たちに警戒感を与えるセンスは避けたい。
小型軽量でおしゃれであることがスナップ用途には重要だ。
というわけで、私が現時点でスナップ撮影に最適だと考えるデジタルカメラはベスト3は以下の3機種。どれも素晴らしいスナップカメラだと思う。
- SONY α7C
- FUJIFILM X100V
- RICOH GRⅢ
この3機種を選んだ理由を説明したい。
AF抜群の小型軽量フルサイズ〜SONY α7C
まず、α7Cはフルサイズでありながら約500g、しかも軍艦部がないのでバックの収納も嵩張らない。AFは正確かつ早い。フルサイズ&手振れ補正搭載なので夜間撮影でも不満なく撮影できる。撮影後の撮れ高は格段に向上する。
機能・性能がα7Ⅲと変わらないため、一部の”スペック警察”から批判もあったが、関係なく、よく売れているようだ。フルサイズの大きさ・重さに辟易していた人たちの心に刺さったのだと思う。
以下の写真は、α7Cの作例