ペンタックス一眼レフ「K-3 MarkⅢ」に見る謎
多くのカメラファンやペンタキシアンがなぜ歓喜したのか?
久しぶりに新型カメラに歓喜する光景を見たような気がする。
あの時もそうだった。
2018年3月、ソニーがミラーレス一眼のフルサイズα7Ⅲを発表したときである。
当時はまだ珍しかったフルサイズミラーレス。プロ機α9に迫るスペック(いまでも色褪せていない)、価格は富士フイルムのAPS-C・X-H1と同水準(22〜23万円台)。歓喜の注文が相次ぎ、以来、α7Ⅲは長いこと売れ筋ナンバー1に居座り続けた。いまだにトップ10に残り続け、王者キヤノンやニコンの市場シェアを奪った歴史的カメラとなった。
そして、今年4月23日。存続危機の噂が絶えないペンタックスからAPS-Cのフラグシップ「K-3 MarkⅢ」が発売された。SNS上には購入したユーザーからは歓喜のツイートが溢れかえり、「ペンタックス」がトレンドワードに急浮上した。
K-3の新型が発売された、2015年5月の先代「MarkⅡ」以来、実に6年ぶりとなる。その間、メーカーから「フラグシップを開発中」「もうすぐ発表」などとアナウンスされながらも、なかなか発売されることはなかった。「もう待てない」と痺れを切らし、他メーカーに鞍替えした人もいた。
6年間、待ちに待った新型モデルなのだから、ペンタックスファンが歓喜したのも無理はない。心から祝福したい。そして、私もいずれ手にしてみたいと思う。
「K-3 MarkⅢ」の真の魅力は何か?
「K-3 MarkⅢ」は、大別すると、次のような特徴がある。
- 光学ファインダーがフルサイズ並みの視野
- 最高ISO感度160万まで可能な超高感度性能
- 5.5段分のボディ内手ぶれ補正を搭載
私が思うに、ペンタックス機の最大の利点はボディ内手ぶれ補正をしっかりと搭載している点だ。デジタル一眼レフでは高画素機のニコンD850にも魅力を感じているが、これは4000万以上の高画素機にもかかわらず、ボディ内手振れ補正は搭載されていない。
一方、私が使用しているペンタックスのフルサイズ「K-1 MarkⅡ」は、3640万画素と比較的高画素ではあるが、5軸5段分の手ぶれ補正を搭載している。これは暗所撮影などで、シャッタースピードを稼いでISO感度を抑制できるので実に役立つ。
では、今回発売された「K-3 MarkⅢ」が物凄く高スペックなのか?
「どこがそんなにすごいの?」と不思議に感じる人も少なくないだろう。私もペンタックスユーザーでなかったら、同じように感じていたと思う。
スペックに関しては、ようやく他メーカーに追いついた程度だと感じる。
ペンタックスはAF性能の弱さが指摘されてきた。野鳥やスポーツ撮影の現場はキヤノンやニコンばかり。「それペンタックス?」と小馬鹿にされた人もいるはずだ。
そのAF性能は今回のモデルチェンジでようやく最新のミラーレスに追いついた、いや、まだ追いついたとは言い難い。
にもかかわらず、多くのファンが「K-3 MarkⅢ」に歓喜の声を上げたのはなぜか?
最大の理由は、デザインの良さだと思う。
カメラは見た目が何より重要なのだ。趣味の道具なら、なおさらだ。
今回、「K-3 MarkⅢ」を見て、富士フイルムX-Pro3を下取りに出してK-3Ⅲを注文した人もいた。とかく、フジフイルムファンはカメラのスタイルに敏感なユーザーが多いので、K-3Ⅲのデザインが琴線に触れたのだろう。
「デジタル一眼レフは重くて大きく不細工」
ペンタックスの「K-3 MarkⅢ」はこんなイメージを払拭してくれるモデルだと思う。
ただ、以前申し上げたが、「K-3 MarkⅢ」の最大の弱点は価格である。
「APS-Cの一眼レフにポンと簡単には25万円を支払えない」という人も多いはずだ。
では、どうすればいいのか?
ペンタックス機の従来機を再評価して存分に楽しむ方法
従来機の視野倍率の拡大にはPENTAX純正「拡大アイカップ」を活用
新型「K-3 MarkⅢ」の最大の特徴は、フルサイズ並みの光学ファインダーである。
視野倍率が低いと、どうしても井戸の底を覗くような感じになるものだ。
私は古いレンジファインダーのバルナックライカⅢfやNikon SPを使用しているので、それに比べたら、ペンタックス機はどれも快適そのものである。
ただ、モノは試しである。
PENTAX純正の「拡大アイカップ」をAmazonで購入し、現在所有しているAPS-CのPENTAX KPに取り付けてみた。その費用は2000円でお釣りが来た。
この純正「拡大アイカップ」はファインダー倍率を約1.18倍に拡大する。このため、ピント確認などが容易になる。PENTAX KP以外に、K100D Superに試してみたが、問題なく取り付けが可能だった。もちろん、同じように視野が拡大された。
この拡大アイカップは純正なので品質も悪くないし、取り付け後、がたつくこともない。
ただ、ひとつだけ注意点がある。
私は眼鏡を使用しているが、四隅が少し蹴られる。裸眼で覗いてみたが、裸眼だと蹴られは軽減された。
多少の蹴られがあるものの、眼鏡を使用していても視野が拡大されて、被写体は見やすくなる。M42マウントのSuper-Takumar 55mm F1.8をつけて撮影してみたが、ピントの山が掴みやすくなった。
今後は、この拡大アイカップを常用しようと考えている。
ペンタックスが描き出す色と世界
最後は恒例のスナップ。
最近はPENTAXのフルサイズ「K-1 MarkⅡ」をスナップに持ち出すことが多い。Leica M(Typ240)のようにガッチリ握れて、実に撮影しやすいと感じている。
PENTAX K-3 MarkⅢが発売された4月23日。ツイッターのTLに喜びのツィートが流れ、まるで自分のことのように嬉しくなった。
窓の外は爽やかな快晴。祝福の気持ちを込めて、K-1 MarkⅡを持ち出し、中目黒から代官山をスナップした。
今回は「Congratulations Photo」、である。