写真を1枚1枚丁寧に撮影したいならライカM10しかない!
ライカM10はAF時代の反逆児
カメラの最高峰ともいえるライカM10を購入した。
同時に、レンズも焦点距離35㎜、50㎜、90㎜のレンズ3本を揃えた。本体とレンズの合計は200万円を超えたが、これが人生最後の道楽だと思っている。
最初に言っておくが、私はライカの回し者ではない。個人的にはフジフィルムが好みだ。機能面ではソニー信者かもしれない。
では、なぜ、ライカM10を購入したのか?
私は、過去、毎日、フィルムカメラで撮影する生活をしていた。
カメラはニコンF3。もちろん、自分でフィルムを現像し、印画紙に焼き込んでいた。
当時は毎日が修行のような日々。ただただ、日々、一枚一枚丁寧に撮影した。撮影を楽しむ心の余裕はなかった。
あれから、30年ぶりにカメラ撮影を再開した。
デジタルカメラはとにかく便利だ。ソニーα7Ⅲのオートフォーカス(AF)は爆速でピントを合わせてくれる。AFの性能は素晴らしく、ピンボケ写真を撮ることはない。
「これは極楽だ」と思っていたが、かつて自分でフォーカスを合わせて一枚一枚丁寧に撮影していた頃の味を懐かしく思うようにもなっていた。
そして、MFだけのカメラで自分を追い込むことも必要かと考えた。
カメラがすべて段取りしてくれる便利なデジタル時代。私のようなズボラ男は、ついついカメラのご好意に甘えてしまう。
ここはM10に厳しく指導していただこうと企てた。カメラの値段の高さは、その授業料ということになる。
M10の魅力はルックスだけではない!製造過程にこそ感動がある
それにしても、ライカM10のルックスは素晴らしい。おそらく、このルックスだけで購入する人もいるのではないかと思うほどだ。
それはそれでいいと思う。
芸術作品にお金を支払う人はいる。きっとM10は工業製品でありながら、芸術作品の域に足を一歩踏み入れているのではないかと感じる。
なぜなら、ライカM10が完成するまでの動画を見れば、手作りで完成品を仕上げる様は圧巻である。
この動画には、次のような説明が記されている。
ライカM10は、品質、精度、そして完成度に対する当社の伝説的な情熱を込めて構築されています。それは独Wetzlarの私達の工場で優秀な専門家によって独占的に製造されています。ドイツで品質がどのように作られているかを見てみましょう。
動画を見ると、ライカM10のルックスも性能も、専門の職人によって、一台一台丁寧に作られていることが分かる。
もうひとつは、ライカの聖地ともいえるドイツWetzlarにある工場で製造していることに誇りを持っている。
人件費の安い海外に生産の地を求めようとする日本のメーカーは、ライカの姿勢をもう少し参考にしたらどうだろうか?
ブランドは、こうしたやせ我慢の末にストーリーを伴って生まれるものだ。
ライカM10の魅力は画像の情緒性にある
ライカM10は小型レンズが素晴らしい
これはM10に限った話ではないが、超小型のレンズも魅力だ。
ライカのM型レンズはAF非対応なので構造的にシンプルにできる面もあるにしても、前面にセリ出す部分はほんの数センチ。しかも、鉄の塊が男心をくすぐる。フードの形状も秀逸だ。
上記のレンズはライカM10の定番とも言える「SUMMICRON-M 35mm f/2 ASPH.」だが、長さはフードを含めても5㎝ほど(レンズ本体3.5㎝)、重さは約250g。最近、レンズはどんどん大型化するなかで、別のベクトルだ。
「SUMMICRON-M 50mm f/2 ASPH.」もまた、本体は約4.3㎝、重さ240g。システムがコンパクトにできるのは、外出する際にも収納が楽である。
ライカM10はスペックで判断するカメラではない!
最後に、ライカM10のスペックを見ていきたい。
M10は、昨今の各メーカーのカメラ作りと、真逆の思想だ。
写真撮影に不要なものは極力排除している。つまり、”引き算の思想”だ。今風に言えば、機能の”断捨離”と言っていいかもしれない。
M10には、最近のデジタルカメラなら例外なく備えている動画機能がない。写真撮影に特化したカメラだ。
手ブレ補正機能もない。しっかり、腕と手でカメラを固定してピントを合わせ、シャッターを切る。まるで、フィルムカメラのような撮影技術が必要だ。
「お前は俺を使う資格があるのか」。
M10に試されているような気がするという人もいる。あるいは、M10で撮影すると、妙に緊張するという人もいる。「人を選ぶカメラだ」という人もいる。
どれも当たっていると思う。
M10は本当に上級者のカメラだろうか?
とても前置きが長くなったが、主なスペック内容をまとめてみた。
”引き算の思想”で作られたカメラだけあって、もの凄いスペックというわけではない。
ライカM10 |
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発売日 | 2017年01月28日 |
価格 | 90万円台 |
センサー | フルサイズ(36×24mm CMOS) |
画素数 | 2400万有効画素 |
ISO | 100~50000 |
連写 | 5コマ/秒 |
ファインダー | 大型ブライトフレームファインダー (倍率0.73倍) |
モニター | 固定式・3インチ (103.68万ドット) |
ライブビュー | ○ |
シャッタースピード | 1/4000~125秒 |
バルブ撮影 | ○ |
セルフタイマー | 2、12秒 |
記録フォーマット | RAW(DNG)、JPEG |
動画 | 非対応 |
防塵防滴仕様 | ○ |
Wi-Fi | ○ |
記憶メディア | SDHCカード、SDカード、SDXCカード |
バッテリー | BC-SCL5 |
サイズ | 幅139mm×高さ80mm×38.5mm |
重さ | 660g(バッテリー込み) |
数あるカメラの中で最高峰に位置するカメラだが、撮影する上で、今時のカメラと大きく異なるのは、動画の撮影機能がない点とマニュアルフォーカス(MF)だという点だ。
その意味では、きわめてベーシックな機能のカメラといえるかもしれない。
ただ、こうしたベーシックなカメラで撮影していると、カメラの仕組みがよくわかると思う。
シャッタースピートと絞りの関係や、焦点を合わせる楽しさ、描き出す画像の情緒性や美しさなどなど、このカメラを使って学び、楽しめることは数多い。
M10は、上級者だけでなく、これからカメラを始めたいという人であっても選択するのはおかしくないと個人的に思っている。
ただ、決してスポーツ撮影に利用するカメラではない。動体撮影を楽しみたいのなら、AFの優れたソニーα9を買った方が幸せになれる。
それでも、M10を買うメリットはどこにあるのか?
一つは幸せになれることである。
そして、もう一つ、これだけ高額なカメラを購入したら、他のカメラが色あせて見えて、いろいろなカメラが欲しくなるようなカメラ沼にはまることはないだろうと思う。