富士フイルムX100Vは不幸な門出となってしまった!炎上プロモーションを考える

CAMERA COLUMN
image:富士フイルム公式サイト
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最近の富士フイルムはちょっとおかしい

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富士フイルムが巻き起こしたPR動画の炎上問題

無視しようとも考えましたが、私はフジユーザー。しかも、そのプロダクトの魅力を書いているのですから、やはり避けては通れないと思いました。

それは富士フイルムのプロモーション炎上問題。この問題を無視するのはむしろ不誠実と考え、本稿をアップしました。

私が購入を検討している富士フイルムの高級コンデジ「X100V」が不幸な門出となりました。

富士フイルムがプロモーションサイトにアップした動画が炎上したからです。

2020年2月5日朝、富士フィルムはX100Vの発表と同時に、カメラマン・鈴木達郎氏が渋谷で街ゆく人に突然カメラを向けて撮影するプロモーション動画をアップしました。

すぐに視聴した人たちから「気持ち悪い」「迷惑行為」「盗撮を推奨しているのか」など批判が殺到しました。

これを受けて富士フイルムはその日のうちに動画を削除し、公式サイトには次のような謝罪文を掲載しました。

「FUJIFILM X100V」プロモーションサイトにおいて、視聴者の皆さまに不快感を与える動画が掲載されましたことを深くお詫び申し上げます。

本日、当該プロモーション動画の配信を停止いたしました。

頂戴いたしました、多くのご意見・ご指摘を真摯に受け止め、今後このようなことがなきよう努めてまいります。

引き続き、写真の素晴らしさを多くの皆さまに共感をもって受け止めていただけるよう取り組んでまいります。

「盗撮」と言うより「強撮」!私も感じた気持ち悪さ

私も、この動画を拝見しましたが、鈴木氏の撮影手法は「盗撮」というよりは「強撮」。嫌がる無関係の人をいきなり撮影する行為には気持ち悪さがありました。

報道写真の場合は、嫌がる被写体であっても撮影し報じることによって、不正や危機など問題提起となります。

ですから、報道目的のカメラ撮影は、被写体がイヤがろうが、多少手荒な撮影手法であっても許容されています。

しかし、鈴木氏は報道カメラマンではありません。かといって、ドキュメンタリーカメラマンとも少し違うようです。

私は以前、鈴木氏が海外で同様の手法で撮影しているユーチューブ動画を見たことがあります。

その動画のなかでは、撮影された人が怒って一緒に警察に行っても違法ではないから大丈夫と鈴木氏が話しているシーンがあり、釈然としなかった覚えがあります。(YouTube動画4分35秒付近から)

「違法でなければ、許されるのか?」という気分です。

そのモヤモヤした気分は、民法の肖像権や迷惑条例といった法的問題以前に、カメラマンの良心や姿勢に疑問を感じたからだと思います。

富士フイルムは、X100Vのプロモーションを検討した際、APS-Cコンデジとして人気のリコーGRⅢに劣らない機動力のあるカメラであることをアピールしたいと考え、「強撮スナップ」の鈴木氏を起用したのかもしれません。

しかし、この動画を社内プレビューした段階で「これはまずい」と感じ、商品PRとしての公開に反対した人はいなかったのでしょうか?

謝罪文を掲載するだけでなく、社内でどういう経緯で動画が制作されて公開に至ったのか、削除はどんな判断なのか、しっかりユーザーに説明するのが上場企業の説明責任だと思います。

なぜなら、もっとも嫌な思いをしているのは「フジフイルムのイメージに傷がついた」と残念に感じているフジユーザーや株主ではないかと思うからです。

プロダクトのスタイルや性能も重要ですが、そのカメラに込められた魂やイメージはとてもに大切なものです。

X-Pro3のプロモーションから気持ちの悪さを感じていた

それにしても、最近の富士フイルムは少し変です。

X-Pro3は格納式の液晶モニタ(Hidden LCD)を採用しました。液晶モニタを見たい時には、下方にモニターを開かないと見れない方式です。

富士フイルムは撮影に没頭してほしいという思いを込めて使いづらい液晶モニタにしたと説明しています。

嫌な人は買わなければいいですし、それでも魅力的だと感じる人は買えばいいので、本稿ではこの是非を論じるつもりはありません。

ただ、フリーランスの人たちにカメラを使わせて「確かに撮影に没頭できる」と言わせるのはどうかと感じたものです。

それなら、従来の固定モニターで電源を切る方式やバリアングルで裏側に収納する方式だって考えられます。

富士フイルムとしがらみのない人やフジとのしがらみの薄いYouTuberは実機を手にして「正直言って使いづらいです」と解説しているのを見て、視聴者や消費者に対して誠実なYouTuberだなと思ったものです。

富士フイルムはスナップ文化を大切にして欲しい

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フリーランスのカメラマンをもっと大切にしてほしい

今回の炎上動画は、決して裕福そうには見えないフリーカメラマン鈴木氏を起用し、動画が炎上したら、すぐに彼の撮影シーンを削除しました。

おそらく鈴木氏のダメージも小さくないはずです。

私の知人にもフリーランスのカメラマンは数多くいますが、かつて、こんなことがありました。

当時、メディアが大注目していた大物政治家A氏と京都・祇園で会食した際のことです。

お店の女将が「玄関先にカメラマンが一人待機している」と報告してきました。A氏は「私は裏口から帰りますよ」と言っていましたが、私は「コソコソする必要があるのか」と思い、玄関口まで行って確認すると、待機していたのは旧知のフリーカメラマンでした。

彼はA氏が京都に滞在しているという情報を入手して、一人、東京から京都まで撮影に来ていました。

私は部屋に戻って、次のように言った覚えがあります。

「Aさん、カメラマンはあなたも知っているBですよ。彼にも生活があります。仮に写真を撮られたとしても変な書き方はしない人物です。表玄関から出て、数枚撮らせてあげたらどうですか?」

「そうだな。あいつも生活があるからな」

そう言って表玄関から出て「おう、君も京都にきているのか」と言って、数枚撮影させていました。

数日後、某有名写真誌には「A氏、京都でどんな戦略を練ったのか?」と大きな記事が踊っていました。記事はそんな目くじらを立てるような内容ではありません。

しかし、政治の舞台は東京・永田町です。京都・祇園と大物政治家の取り合わせが写真的には面白いということだったのかもしれません。

富士フイルムは自分たちの商品を販売するためにフリーカメラマンやユーチューバーを使って印象操作する手法を一度再検討してみてはどうかと思います。

彼らは大企業から声がかかれば、それはうれしいはずです。

しかし、今回の炎上動画は「強撮」された一般人は当然として、炎上したカメラマンもまた大きなダメージを受けたはずです。

富士フイルムは、フリーカメラマンやYouTuberをもっと大切にして欲しいと思います。

彼らをPRに利用するにしても、X-Pro3やX100Vのように、どこかに不自然さがないのか、もっと深く考えて欲しいと願っています。

動画削除→お詫び文だけでいいのだろうか?

私が魅力を感じ購入を考えているX100Vが「盗撮」という批判と相まってイメージダウンすることは避けられないと思います。

ただ、今回の炎上問題で、私がそれ以上に危惧することがあります。

それは今回の問題が、一般人の映り込むスナップは全て悪といった極端な議論に発展する端緒となることです。

または、街でカメラを持っている人が警戒される社会の風潮です。

そうなると、スナップはみんなカメラではなく、スマホで撮影するようになるかもしれません。

ですから、今回の富士フイルムの問題は、単にPR方法の失敗という軽い問題ではなく、カメラ文化にマイナスな風潮を作り出すかもしれないという意味で重大な問題なのかもしれません。

今回、富士フイルムは炎上した動画を削除し、短いお詫び文をサイトに掲載しただけです。

多くのカメラファンが失望しているだけに、フジフイルムの今後の対応に注目したいと思います。

私の好きなスナップカメラマン

スナップ撮影には街並みや人々の服装、文化、風俗の変遷を記録する重要な価値があります。

私が好きなスナップカメラマンに昨年2019年に93歳で亡くなられた長野重一さんがいます。

慶応経済学部卒業後、戦後の日本をカメラやムービーを通じて記録し続けたカメラマンで、晩年は小さな黒いカメラを片手に自分の住む街を撮り続け、2019年に亡くなられました。(Wikipedia

私がなぜ、長野さんに魅力を感じるのか?

それは長野さんが街や人々を撮影するとき、まずは自然体であるということです。

そして、長野さんの眼差しは被写体に対し愛情に満ち溢れていて、作品にはその心情が投影されているからです。

次の動画を視聴すると、スナップは大切に守らないといけない文化だと多くのカメラファンが感じるはずです。

長野さんの動画を見ていると、スナップの素晴らしさを感じます。

私は今後のスナップ撮影のために、X100Vブラックの購入を検討していますが、本当に富士フイルムのカメラでいいのだろうかと疑問を持ち始めています。

発売はまだ先なので、しばらく考えたいと思います。

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