2020年はキヤノンが本格的に反転攻勢に転じる
キヤノンが驚きのスペックで新型フルサイズミラーレスの開発発表
ニコンがAF性能を大幅に強化したプロ向けのフルサイズ一眼レフ「D6」を正式発表した翌日、キヤノンは「D6を買うのはまだ待て」と言わんばかりに、高スペックなフルサイズミラーレス「EOS R5」の開発を発表しました。(ニュースリリース)
キヤノンは2018年にフルサイズミラーレス「EOS R」を発売しましたが、ボディ内手ブレ補正はなくデュアルスロットにも対応していない平凡なスペック内容でした。
しかし、今回開発発表された「EOS R5」は、以下のように、大幅にスペックを改善し、ユーザーの注目を集めています。
- 新型のフルサイズCMOSセンサー
- 静止画切り出し可能な8K動画撮影
- メカシャッター12コマ/秒、電子シャッター2012コマ/秒
- キヤノン初のボディ内手ぶれ補正
- デュアルスロット対応
- カメラからクラウドプラットフォーム”image.canon”に画像を自動転送する機能搭載
- RFレンズ「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」と装着可能なエクステンダ「RF1.4×」と「RF2×」の開発
キヤノンは「EOS R5」の開発を発表しましたが、画素数は未発表です。
4000万画素以上の高画素が予想されていますが、今後、ソニーなど他社メーカーがどんな新機種を発表するのか見定めた上で、最終的に決定するのではないかとも見ています。
最近は、どのメーカーも上位モデルにはボディ内手ブレ補正やデュアルスロット対応は搭載しているので、さほど珍しくはありません。
ただ、私がキヤノンの開発発表で琴線に触れた点が2点あります。
「EOS R5」はスマホのワークフローに近づくか?
プロカメラマンにとっては、国内の上位カメラトップクラスとなる秒間12コマのメカシャッタースピードやAF速度になるのかという点に注目していると思います。
ただ、かねてからキヤノンの御手洗冨士夫・名誉会長は、2019年1月、次のように指摘していました。
- ミラーレスカメラが伸びていると言っても一眼レフとの置き換えだ。
- デジタルカメラの市場が今後2年間で半分ほどに縮小する恐れがある。
- 普通の人はスマホで写真を撮る。プロ・上級者のカメラは500万~600万台で底を打つ。
つまり、スマホで写真を撮る文化を反転させることは難しく、ミラーレス化が進んだとしてもカメラの劣勢は変わらないという指摘です。
カメラメーカーのトップが自分たちに不都合な予測を打ち上げたわけですから、その勇気とともに真実味を持って受け止められました。
スマホがカメラに優っている点はまずは携帯性があります。ただ、それだけではありません。
写真や動画を撮影したあと、SDカードなどメディアを介さず、自動的に画像を取り込めているという点です。
このワークフローの楽さ加減が携帯性とともに、楽に写真を撮影できるスマホの特性をより一層高めています。
クラウドプラットフォーム「image.canon」への自動画像転送に注目!
今回、キヤノンが開発発表した「EOS R5」は撮影したあと、画像が自動的にクラウドプラットフォームの「image.canon」に転送されるため、いちいち、カメラからSDカードを取り出してパソコンに取り組む手間が省けるようになります。
この機能はカメラのワークフローに対するイノベーション(革新)ともいえます。
たとえ、大容量のデータであっても、通信は5G時代に突入します。そこまで見据えた自動転送機能だとしたら、時代の先行きを見据えた機能だと感じます。
最近、業界大手のキヤノンやニコンには革新が希薄でした。
イノベーションがないばかりか、プロも含めてソニーに機材を変更する人が雪崩を打ってソニーの一人勝ちの状態が続いていました。
しかし、2020年は、いよいよキヤノンが反転攻勢を開始する1年になるのか、カメラ業界はいよいよ最終決戦に入りました。
ただ、キヤノンが反転攻勢できるかどうかとなると、いくつか条件があると思います。
キヤノンが「EOS R5」を驚きの安値で販売できるのか?
「EOS R5」が20万円台ならゲームチェンジャー!30万円台なら平凡カメラ
ソニーが空前のフルサイズミラーレスブームを築いた原動力は、2018年春に発売以来、2020年のいまだに売れ続けているα7Ⅲが驚きの価格で発売されたからです。
スペックからして30万円台でもおかしくないα7Ⅲが2018年3月の初値が22万3295円でした。フォーサーズやAPS-Cセンサーの上位カメラより安値で売り出したことが、ブームの発端となりました。
カメラは性能も重要ですが、価格が最も大切です。
スマホで素晴らしい写真が取れる時代に、カメラに何十万円も支出するのは余程のカメラマニア。ソニーのα7Ⅲは驚愕の低価格で一般ユーザーを取り込んだわけです。
その意味で、キヤノンは「EOS R5」をα7Ⅲと同じような価格帯で発売できるかどうかが分岐点になりそうです。
「良いものだから高くて当然」と考えるのか、「良いものを安く売るのは先行投資」と考えるのか。
経営者の戦略的な決断の勘所だと思います。
誰もが30〜40万円台と予測しているので20万円台後半で売り出せば、ゲームチェンジャー。
逆に、30万円台なら従来からのキヤノンファン向けか、高スペック好きな一部マニア向けカメラで終わるかもしれません。
標準ズーム「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」は395gの小型軽量
今回、「EOS R5」とともに私の目を引いたのは、標準ズームレンズ「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」が4月中旬に発売されるという発表です。(ニュースリリース)
最近、キヤノンは「ミラーレス用のレンズがとても高額だ」という話を聞きます。
本当かと思い、価格.comを見てみると、ミラーレス用のRFレンズは10万円台、20万円台のレンズが大多数を占め、まるでソニーのGMレンズのような価格です。
ソニーの場合には低価格のレンズを選択できますが、現状ではキヤノンユーザーは安いミラーレス用レンズを選択できません。
カメラはボディとレンズを合わせて価格や重さを考えるべきもので、現時点ではキヤノンのミラーレスはまだまだコスト高だと感じます。
そんななかで今回発表された標準ズームレンズ「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」は全長約88.8mmで本体質量が約395gと、極めて小型・軽量です。
ソニーの「FE 24-105mm F4 G OSS(SEL24105G)」はF4通しなので単純比較はできませんが、価格はソニー約13万円、キヤノン約5万9000円。
重さもソニーより300g近く軽量なので、作例が増えて画質の良さが確認されたら人気のレンスになるかもしれません。
「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」には新たな期待感
同じ軽量・コンパクト化に向けて開発が進んでいるのが、ミラーレス用の望遠ズーム「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」です。
テレ端500㎜のF値は7.1で妥協する代わりに、軽量・コンパクト化をはかった思想は機動性を重視するユーザーからは歓迎されるのではないでしょうか。
同時に開発が進んでいるテレコンバーター「エクステンダRF1.4×」と「エクステンダRF2×」も発売されたら、最大1000㎜の小型望遠システムが実現できます。
仮に、軽量・コンパクトな「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」に2倍テレコンをつけて、F値14.2であってもAFが素早く効くようであれば、「F値の暗さに目をつぶる」というユーザーもいるはずです。
重くて高くて大きなカメラシステムからの脱却に、業界最大手のキヤノンがどんなイノベーションを巻き起こすのか?
2020年、ソニーに対する反転攻勢とともに、私が注目しているポイントです。
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