ソニーがフルサイズミラーレスのフラッグシップα9Ⅱを発表しました。10月9日(水) 10時から予約販売を開始、11月1日から発売する予定です。
現行のα9は、2年半前の2017年5月に発売されていますが、度重なるファームアップで機能が大幅に向上しました。
爆速AF性能や連写性能を誇り、いまでも他のメーカーも含めて最高峰に君臨する機種といって過言ではありません。
このため、「特に不満がない」というα9ユーザーも少なくありません。
にもかかわらず、ソニーが今回、α9Ⅱを発表したのはなぜか?
現行のα9と比較しながら、ソニーの戦略、さらには賢明なる購入方法を考えてみました。
α9Ⅱのスペックに見える使い勝手の大幅な向上
アマチュアから失望の声!狙いは報道現場の利便性ファーストか
ソニーが多くのカメラファンを驚愕させた6100万画素のフルサイズα7RⅣを発表したのは7月17日でした。
あれから、わずか3ヵ月足らずのうちに、今度はα9Ⅱを発表し、異例ともいえる矢継ぎ早のビックモデル発表でした。
この間、α9と同等のAF性能を搭載した高級コンデジ「RX100M7」や、手ブレ補正・180度チルド式液晶モニターなど理想的なAPS-Cカメラα6600や廉価版6100も発表しました。
それだけに、真打ちのα9Ⅱは大きな注目が集まり、海外サイトの観測記事がさらに期待値を高めて、サプライズを期待するファンも少なくありませんでした。
しかし、ソニーが10月3日に海外で発表したα9Ⅱのスペックは、α9と同じ2400万画素、積層型CMOSセンサー、秒20コマ連写。さらにはα7RⅣとほぼ同様のボディサイズで持ちやすくなりましたが、機能面で共通点も多い内容でした。
このため、カメラ専門サイト・デジカメinfoには、「センサーそのままだし、これはちょっと期待はずれですわ。」「サプライズが少なくてある意味びっくりです。36MBじゃないとは!」「貯金してましたが、これじゃ買いませんな。残念。」といったコメントが相次ぎました。
確かに、進化部分はさほど多くはなく、α9Proといったマイナーチェンジという指摘も理解できます。
しかし、スポーツなど報道現場で使用するプロカメラマン用に最適化されたと考えれば、今回のα9Ⅱは納得できる進化にも見えます。
α9より進化した点は何か?
報道現場では、撮影素材にキャプションをつけて一刻も早く画像を本社に送ることが重要になります。
今回のα9Ⅱは、その画像の送付やキャプション作業に配慮した改善が加えられています。
α9と比べて進化したのは、主に次のような点です。
- メカシャッターが5コマから10コマに進化
- 手ぶれ補正がα9の5段から5.5段分に強化
- 防塵・防滴性能を一層強化
- 1000BASE-T対応の有線LAN端子を搭載して最高約1Gbpsの高速通信
- 5GHz帯域無線LAN(Wi-Fi)対応
- デュアルスロットが両方ともUHS-Ⅱに対応
- アンチフリッカー搭載
- USB Type-C (USB 3.2 Gen 1)端子を追加
- カメラ本体で再生画像データに最大60秒の音声メモ録音が可能
発表スペックを見ると、手ぶれ補正を5.5段に強化。競技場の手持ち撮影にも配慮しています。
防滴・防塵性能や画像の送信機能も強化。最高約1Gbpsの高速通信を実現しました。
デュアルスロットが両方とも高速のUHS-Ⅱに対応したのも画像送信の迅速化につながるはずです。
感心したのは、カメラ本体だけで画像データにカメラマンが説明メモを音声で録音できる機能です。
この録音機能によって、画像を受け取った本社側が多くの素材から掲載する画像を見つけ出し、キャプションをつける際に重宝するはずです。
ソニーは相当、報道の現場カメラマンから、どんな機能があれば便利なのか調査した上で、α9Ⅱを開発したようにもみえます。
α9Ⅱに対するアマチュアの失望は筋違い
ソニーがα9Ⅱで目指した進化とは?
これまで説明したように、α9Ⅱは撮影性能もさることながら、撮影後の画像送信や画像処理の利便性にも着目した進化を遂げています。
ソニーが想定したα9Ⅱの主たる購入対象は、経費で購入する法人、つまり新聞社や通信社など報道機関とみられます。
報道機関に購入決定してもらうには、カメラマンや本社デスクが便利だと感じるカメラでなければいけません。
デジカメinfoには「サプライズが少なくてある意味びっくりです。36MBじゃないとは!」というコメントがありましたが、ソニーはサプライズよりも報道機関の利便性に留意したのだと思います。
短時間に膨大な画像データを処理しなければいけない報道機関にとって、高画素カメラよりも現状の2400万画素の方が望ましいという判断だったのかもしれません。
α9Ⅱはスペック上のサプライズよりも、報道カメラマンの実務的な使い勝手を追求したモデルといえます。
実際、ソニーは公式サイトで「プロフェッショナルの要望に応え、大幅なワークフロー改善と操作性向上を実現したフルサイズミラーレス一眼カメラ」とうたっています。
東京五輪へのソニー本格参戦を象徴するモデル
α9Ⅱは、2020年の東京五輪にソニーが本格的に参戦することを表明したモデルだともいえます。
オリンピックなど国際的なスポーツ大会は、ニコンやキャノンを使用する報道カメラマンが大半です。
ソニーα9はAF速度や正確性は他のメーカーを圧倒していますが、レンズの品揃えやカメラ本体の強靭性や操作性などはまだニコキャノに劣っているという人もいます。
私も30年近く前、ニコンF3を仕事に使用していましたが、春夏秋冬、どんな季節でも、多少手荒に扱っても、決して故障しない信頼できる機種でした。
プロユースのカメラは強靭性や安定感、そして信頼性が重要です。
このため、α9Ⅱは現行のα9を熟成させ、防滴防塵を強化し、画像の送信力や画像編集に役立つ音声録音も搭載しました。
さらにレンズの品揃えという点でも、最近、2倍テレコンも利用できる200〜600㎜の望遠レンズ(SEL200600G)を発表するなどラインナップを強化しました。
来年の東京オリンピックでは、カメラマン席にニコンやキャノンに混じってソニーα9Ⅱがどれだけ並ぶのか、非常に興味深いですね。
アマチュアはα9とα9Ⅱ、どちらを選ぶべきか?
α9は2017年5月26日の初値が48万4910円でした。
その後も高価格帯を推移したにもかかわらず、アマチュアカメラマンにも人気の機種でした。
一方、今回発表されたα9Ⅱはまだ国内価格が不明ですが、市場推定価格は税別で50〜55万円とみられています。税込みだと60万円を超えるかもしれません。
ボディだけで60万円超というのは、アマチュアが趣味として気軽に買える金額ではありません。
一方、α9はα9Ⅱ発売後にディスコン(生産終了)になるかどうか分かりませんが、10月4日現在、価格.comの最安値は36万7702円です。
初値から12万円ほど値下がりしているうえに、性能的にはα9Ⅱに大幅に劣っているわけでもありません。
むしろ、性能と値段差を考えると、アマチュアにとってα9は狙い目かもしれません。
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