シグマの大口径標準ズーム「28-70mm F2.8 DG DN」を即買いした理由
混乱気味なカメラやレンズの大きさ論争
最近、カメラやレンズの大きさや重さをめぐる論評や批評が混乱しているように感じる。
その発端は、先日、Nikonが発表したフラッグシップ「Z9」の写真だ。
一部YouTuberが縦グリ一体型の大型スタイルだったため、セパレート型が良かったのではないかと発言し、賛否が巻き起こり、最終的に「浅はかすぎた」と反省動画をアップする人まで現れた。
日頃、私はカメラは持ち出しやすい小型軽量なカメラが好ましいと提唱している。しかし、今回、Nikonが公開したZ9の写真を見て、私は「なるほど、Nikonはよく考えたものだ」と感心した。
なぜか?
Z9はあくまで新聞社や通信社などの職業カメラマンをターゲットにしたプロ機だ。巨砲レンズを使用するスポーツ競技をはじめ、場合によっては戦場など過酷な環境下で撮影することを想定している。縦グリ一体型はバッテリー交換の頻度が減り、突然の雨風にも強い。タフな安心できるカメラ機材だ。
その大きさや重さだが、私も現役時代、F3本体にモータードライブ(最高秒間6コマ)を装着し、レンズや電池(8本)を含めると、おそらく3kg以上の重量だったと思うが、仕事となると不思議にサイズや重さのことなど忘れているものだ。(唯一、運搬中は気になった記憶があるが)
おそらくニコンは今回のZ9の開発発表にあたって、多くのプロカメラマンの意見を聞いたと思う。そのうえで、プロ向け機材はZ9のような姿が最善と判断したのだろう。もちろん、Z9がどれだけ売れるどうかは分からない。
ただ、Z9はYouTuberが近所の散歩スナップに使用するような用途をメインに想定したカメラではないだろうし、ましてや、ドローン搭載を想定したものでもない。カメラをめぐる論評や批評は、その機材の置かれたジャンルやターゲットを視野に入れ、趣味用カメラとは切り分けて整理し、論評・批評しないと、ユーザーも混乱しかねない。
私は常々、「趣味カメラ」という文言を枕詞にカメラ機材を語っているのも、ガチのプロ機は別の判断基準があると考えているためだ。
もうひとつ、今回のZ9騒動に関して、感心したことがある。反論の声に謙虚に耳を傾け、反省動画を配信したYouTuberがいたということだ。謙虚な姿勢は立派だと思う。敬意を表したい。
というわけで、きょうは私が趣味カメラで、ずっと悩んでいたことに言及したい。
大口径標準ズームをめぐる長年の悩み
私はフルサイズミラーレスはソニー機中心に使用している。ただ、F2.8というF値の明るい大口径標準レンズの選択に悩み、結局、ソニー純正のF4ズーム「FE 24-105mm F4 G OSS」を使用してきた。
この「FE 24-105mm F4 G OSS」はF値が明るくないが、ズーム域が24㎜から105㎜と広く、とても利便性の高い名レンズだと感じている。昨年、旅行に持ち出したのも、このレンズだった。利便性の高さと15万円前後という価格が好印象なのか、ソニーレンズの中では常に売れ行き上位にランクされている。
ただ、このF4通しのズームレンズの重さは663gで、普段のスナップ撮影にはやや重く感じるのも事実。タムロンから、F2.8通しの「28-75mm F/2.8 Di III RXD」(550g)が発売された時に購入しようとも考えたが、描写力やレンズ鏡胴の質感など、いまひとつ惹きつけられなかった。
結局、「男は単焦点で勝負」とばかりに、F2.8の大三元標準ズームは見送ってきた。
しかし、ようやく、私が即買いしたくなる大口径標準ズームが登場したのである。
それが今年3月にシグマが発売した「28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」。しかも、新品価格が売り出し時から9万円を切っていた。即座に予約注文した。
高画質と常用性の両立めざした「28-70mm F2.8 DG DN」
シグマといえば、よく写るが、重くて大きいレンズをつくるメーカーというイメージがあった。
しかし、カメラ機材の軽量小型化を望むユーザーが増えている。黙視できなくなったのか、最近は小型軽量でビルドクオリティも優れた「Iシリーズ」を発表した。メーカーいわく、「高画質と常用性を両立」したレンズ群である。
私も「45mm F2.8 DG DN | Contemporary」を使用しているが、描写もビルドクオリティも秀逸で、所有欲を満たしてくれるレンズである。
今回発売された「28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」は「Iシリーズ」と銘打ってはいないが、手に取ってみると、その流れに沿った製品だと感じた。
では、過去に各メーカーが発売した大口径標準ズームと比較してみたい。(価格は3月現在のマップカメラ相場)
– | 新品価格 | 大きさと重量 | フィルター径 |
シグマ28-70mm F2.8 DG DN | 8万9100円 | 72.2×103.5㎜ 470g | 67㎜ |
ソニーFE 24-70mm F2.8 GM | 24万9975円 | 87.6×136㎜ 886g | 82㎜ |
タムロン28-75mm F/2.8 Di III RXD | 8万6625円 | 73×117.8㎜ 550g | 67㎜ |
シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art | 11万8800円 | 87.8×124.9㎜ 830g | 82㎜ |
これまで小型軽量なレンズといえば、タムロンの「28-75mm F/2.8 Di III RXD」が代表格だった。しかし、シグマの「28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」はさらに小型軽量化されたことがわかる。価格もソニー純正より16万円ほど安く抑えられている。
ただ、レンズを小型軽量化したトレードオフとして、シグマは28㎜スタートとなっている。私はスナップで24㎜という画角を多用しないので、ためらいはなかったが、この辺は撮影スタイルやジャンルによって好みが分かれそうだ。
描写性能は最も気になる点だ。
標準ズームの中では、シグマArtシリーズの「24-70mm F2.8 DG DN | Art」が純正のGMレンズに勝るとも劣らない描写性能だという呼び声も高い。シグマの山本和人社長は「Artシリーズとほぼ同じレンズ構成で、同等の光学性能を目指した」と発言している。
果たして、どんな写真を生成してくれるのか。早速、2日間にわたって撮影に出かけた。