PENTAX KPが最もスナップに適した機種と判断した理由
ミラーレス並みの小型軽量!高級感漂うlimitedレンズも魅力的
スナップに最適なデジタル一眼レフを探求する旅は、今回が最終回。
1回目は2007年発売のPENTAX K100D、2回目はNikon D60を選んだ。いずれもCCDセンサー。ボディ重量は400〜500g台の小型軽量なデジイチだ。最終回は、発売時期が2010年以降、CMOSセンサーの機種から選考した。
デジタル一眼レフといえば、平成から令和にかけ、キヤノンやニコンなど伝統的大手メーカーがしのぎを削ったジャンルだけに多くの機種が発売されたが、最終的に、ペンタックスのミドルクラス・PENTAX KPをスナップに適したカメラに選んだ。
選定基準は、次の3点。
- 小型軽量であること
- 持ち歩きたくなるデザインであること
- 過不足ない機能性能を備えていること
デジタル一眼レフは、重くて大きなモデルばかりだ。フルサイズは800〜900g以上、APS-Cでも700gを超える機種がほとんど。この重さが近年、ミラーレスにシェアを逆転された一因でもある。
しかし、PENTAX KPはボディ重量643g、バッテリーを含めても約700gにとどまる。デジイチにもかかわらず、5軸手振れ補正や防滴防塵を装備しても、バッテリー込み約700gに抑え込んだのは、なかなかのモデルだと思う。
購入前はボディのチープ感は覚悟していたが、握ってみると、予想に反して、良いモノ感もある。ボディ本体の前後と下部にはマグネシウム合金が使われていて、いかにも廉価版的なプロダクトではなかった。
ただ、私が最も重視したのはデザインである。
次の写真をご覧になっていただきたい。
PENTAX KPのデザインは全体的にクラシカル。しかも、PENTAXには小さくて軽い魅力的なレンズも多く、あえて収差を残したlimitedレンズはアルミ削り出しで高級感もある。「FA 43mmF1.9 Limited」を装着したのが上記の写真で、黒ボディに白レンズは美しい姿になった。
仕事カメラなら多少不細工でも我慢はできる。しかし、趣味カメラは所有する喜びを与えてくれるデザインを選びたい。
ミラーレスの人気機種と比較して見えてくること
では、PENTAX KPの基本スペックはどうか。
人気のミラーレスSONY α7ⅢやフジフイルムのフラッグシップX-T4と比較したのが下の表だ。
PENTAX KP | SONY α7Ⅲ | FUJIFILM X-T4 | |
発売日 | 2017年2月 | 2018年3月 | 2020年5月 |
撮像素子 | APS-C CMOS | フルサイズ CMOS | APS-C CMOS |
有効画素数 | 2432万画素 | 2420万画素 | 2610万画素 |
連射性能 | 最高約7コマ/秒 | Hi+:最高約10コマ/秒 | 約15コマ/秒(メカ) |
撮影感度 | 標準:ISO100~819200 | 標準:ISO100~51200 | 標準:ISO160~12800 |
ファインダー倍率 | 0.95倍 | 0.78倍 | 0.75倍 |
5軸手振れ補正 | ○ | ○ | ○ |
ライブビュー | ○ | ○ | ○ |
幅x高さx奥行き | 131.5x101x76 mm | 126.9×95.6×73.7 mm | 134.6×92.8×63.8 mm |
重量 | 643g | 565g | 526g |
価格 | 9万2950円(楽天ビック) | 22万7520円(マップカメラ) | 20万2455円(マップカメラ) |
今年、PENTAX KPの生産は終了したため、執筆時、在庫のある楽天ビックの販売価格を参考にしました。なお、中古の場合は、6万円台で購入可能。 |
ご覧のように、KPは一眼レフだけあってファンダー倍率が優れている。連射性能は3機種の中で最も劣っているが、そもそもスナップという私の用途に高速連射は不要だ。
むしろ、手持ちで夜撮影できるように、5軸手振れ補正に加え、高感度撮影時のノイズに強い点(高感度耐性)が好印象だった。
ボディ重量は他のミラーレスよりやや重いが、limitedシリーズなどレンズを含めてトータルで考えると小型軽量なシステム構築が可能だ。
具体的にデザインとサイズ感を比較してみたい。
以下の写真は、M10-P、α7Ⅲ、X-T4と並べた写真だ。
PENTAX KPのサイズ感はミラーレスと良い勝負だ。
デジタル一眼レフは巨大で威圧感を与えるカメラというイメージを払拭するモデルだ。それにしても、まるでNikon Fのようなクラシカルなシルエットは素晴らしい。写真を見て改めて実感した。
以上が、スナップに最適なデジタル一眼レフとして、PENTAXのKPを選定した理由である。
もうひとつ大切なことがある。カメラにとって重要なのは最後に生成される写真だ。
というわけで、早速、スナップに出かけた。作例をご覧いただきたい。
PENTAX KPが写し出した平和で穏やかな情景 作例と解説
PENTAX KPの作例・目黒川沿いの平和な日常風景をどう表現したのか
PENTAX KPとともに持ち出したレンズは2本。まずは人気の「smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」。もう一本はキットレンズ「smc PENTAX-DA 18-135mm F3.5-5.6 ED AL IF DC WR」である。
PENTAX KPはAPS-Cセンサーなので、キットレンズはフルサイズ換算約28㎜から200㎜に相当する。このレンズ、キットらしからぬ描写力だった。
2021年もコロナ禍の中で桜の季節を迎えようとしている。
桜が芽吹く頃、PENTAX KPとともに、桜の名所・目黒川に足を運んだ。撮影当日は透き通るような青空。その青空に向かって桜が芽吹く姿から、ご覧いただきたい。
ここで一息入れたい。
まず、最初に感じたのは色味の良さである。
目黒川沿いには平和で穏やかな光景が広がっていた。PENTAX KPとそのレンズは私が感じた空気感を見事に再現してくれた。
鳩は平和の象徴だ。目黒川に遊ぶ鳩たちは人懐っこい。この日も、撮影してくれと言わんばかりの表情で私の目の前に突如現れた。
シャッターを切るたびにポーズを変える。かなり、ポートレートに慣れたモデルさんのようだ。
そして、突然、飛び立った。遠景で撮影してくれという。
じっとオスマシ。このカットでポートレートは終了した。
撮影者:PENTAX KP+smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited、smc PENTAX-DA 18-135mm F3.5-5.6 ED AL IF DC WR
撮影補助:さきょう
撮影を終えて感じたこと
PENTAX KPは、文句なしの描写力だった。
姿形の美しいカメラやレンズは描写も素晴らしいというのが私の持論だ。KPはまさに、そうした一台だった。
2017年2月、PENTAX KPは発売された。しかし、翌年、SONYα7Ⅲが誕生。カメラの潮流がデジタル一眼レフからミラーレスに大きく移行する端境期に販売されてきた。ミラーレス旋風の中で生き伸びたわけで、気の毒なモデルでもある。実際、私はつい最近まで知らない機種だった。
ただ、価格.comをみると、ペンタックスのなかで、人気ナンバー1である。なぜ、人気なのか、今回、分かった様な気がした。
価格と品質のバランスがとても良いのである。
撮影感覚も付け加えておきたい。今回の撮影は楽しさのあまり、3時間以上に及んだが、レンズも含めて苦にならない重さだった。同じAPS-CのFUJIFILM X-T4で撮影していた時の感覚に近いかしれない。
また、PENTAX KPは一眼レフだから、素通しのファンダーが心地よい。一眼レフNikon F3で育った私は、KPのシャッター音、シャッター感覚は懐かしくもあった。シャッターを切りたいという気にさせるのだ。
リコーは、PENTAX KPの生産を2月ごろに終了した。実に、惜しい選択をしたものだ。
いま、KPを購入したい場合は、在庫のある販売店を探すか、中古で手に入れるしかない。特別色の塗装を施したカスタムモデル「PENTAX KP J limited」の方が新品在庫が多いような気もする。
ペンタックスは日本のカメラ史に重要な足跡を残してきた名ブランドだ。しかも、各社が軸足をミラーレスに移すなかで、唯一、デジタル一眼レフで突き進むと宣言した。
であるならば、街に持ち出しやすい、いや、持ち出したくなる機種は長く大切に生産し続けて欲しい。PENTAX KPはそう思わせてくれるモデルだった。
今回の撮影で使用した機材は以下の通り。
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