名機ライカM4より軽いフルサイズα7cが登場した
スペック競争の先導者ソニーがフルサイズで小型軽量を提案する意義
当初、細々と運営していた当ブログも、最近はアクセス数が急増し、私自身も驚いている。
なかには業界関係者が読んでいるのではないかと思うほど、アクセス数が多い記事もある。驚くと同時に、少し真面目に書こうかとも思ったが、やはり、私の趣味嗜好を自由に書こうと思い直した。
読者の方々も「それもひとつの考え方だ」と気楽に読んで欲しい。正確なスペックやカタログ的な説明はネット上やYouTube上に山のほど転がっているので、そちらを参考にしていただけたら幸いだ。
私が言及するのは、私自身の趣味カメラとしての使い勝手や妥当性、さらに所有欲を満たしてくれるかどうかという点である。
趣味カメラの機種選定や良し悪しに絶対はない。個々人、趣味は異なるはずで、自分の好みに素直に従うのが幸せなカメラライフになるはずだ。
ところで、前回、私は「カメラをスペックで選ぶ時代は終わった!ニコンZ5やパナソニックS5、ソニーα7cがミラーレスの本流と考える理由」と題してフルサイズミラーレス私考に言及した。
要約すると、多くの消費者が一眼レフからミラーレスに移行したのは、ミラーがない分、軽量コンパクトなためだ。
しかし、一眼レフの雄・キヤノンやニコンがフルサイズミラーレスに本格参入するに従い、ミラーレスの原点・小型軽量が疎かになりつつあるように感じた。
レンズも含めて考えると、巨大なシステムが次々発表され、ミラーレスカメラなのに一眼レフ感が濃厚で、デジャブを感じ始めている。
「いいカメラなのだから大きいのは仕方がない」。こんな一眼レフ的感覚を引きずったプロダクトが目立ち始める中で、最近、登場したニコンZ5やパナソニックのS5は機動性にも留意した機種であり、もしかしたら、ソニーα7cとともにフルサイズミラーレスの本流ではないかという駄文だった。
そのα7cが本日(9月15日)発表された。バッテリーなども含めて509g(ボディのみで424g)。APS-Cのα6600とほぼ同じサイズ感(124.0 x 71.1 x59.7mm)である。重量はあのライカM4(約570g)より軽い。
しかも、中身は発売以来、みんな大好き?α7Ⅲ(有効2420万画素)とほぼ同じ。むしろ、動画性能は実用的な4K30pで29分という撮影時間制限が撤廃され、モニターも今時の動画需要に応えてバリアングルとなっている。
このモニターだが、バリアングルかチルト式か、好みが分かれている。
総じて動画派はバリアングル、スチール派はチルト式を支持する声が多いようだが、私が愛用するライカはモニター固定。バリアングルであっても問題はない。
むしろ、旅行では歴史的構造物を背景とした記念写真の自撮りなどバリアングルの方が便利かなとも思っている。(主な仕様・ソニー公式サイト)
まず先にα7cの私的不満点を挙げてみよう
α7cの利点は多々あると思っているが、まずは不満点から記したい。
ソニーはα7cとともに、キットレンズとして170gの小型軽量なズームレンズ(FE 28-60mm F4-5.6)も発表した。
ただ、28㎜スタートは若干狭い。できることならば、パナソニックのように20㎜スタートのキットレンズにしてほしかった。
ただ、170gという他社にはない小型軽量化には、28-60㎜が最適解だということだったのかもしれない。
これは、タイ・バンコク市内のワット・ポーで撮影した写真だが、大寝釈迦仏の足の裏は巨大すぎて旅行用に持参したRX100M5(24-70㎜)の広角端24㎜では収まりきらなかった。
このときのタイ旅行は可能な限り、街の空気感を記憶に残したいと考え、移動でタクシーは一切使わず、船と電車と徒歩に徹したが、その代償として疲労困憊、クタクタになった。
それゆえRX100M5の小型軽量さにはありがたみを実感したが、唯一、不満だったのは画角。昨年、RX100M7(24-200㎜)に買い替えたが、やはり広角側は同じ。
動画メインのユーザーには20㎜スタートを切望する声が多いようだが、スチールメインのユーザーであっても20-50㎜でいいから広角側に力を入れた別バージョンレンズを追加開発してほしいと願う人は多いはずだ。
もうひとつは、どうしてカメラの正面にメーカーロゴや機種名を入れたがるのかという点だ。
私の所有している機種の中で、ライカM9-PやM3、M4、バルナックⅢf、さらには富士フイルムX100Vは、天板にメーカー名や機種名を記している。
正面の姿をシンプルにすることによってスタイリッシュに見せる思考があっても良かったと思う。
購入した場合にはマスキングテープで隠すと思うが、そのほうがオサレになるはずだと妄想している。
ただ、現時点で、私が感じている不満点は、そのくらいだ。
それよりも、スペック競争の先導者ソニーが「ミラーレスはフルサイズであっても、ここまでカメラとレンズを小型軽量化できる!」と提案した意義は決して小さくないと思っている。
スペック競争に明け暮れる、いまのカメラ業界で、あのソニーが、「スペックもいいが、サイズ感も考えようよ」という提案は皮肉といえば皮肉だ。
おそらくα7cは売れるだろうし、小さなフルサイズという分野はキヤノンやニコンなど他メーカーも追いかけるジャンルになると見ている。
スペック競争とサイズ競争、ソニーはフルサイズの戦線を2方面に拡大したともいえる。
私がα7cの購入を検討する最大の理由
シグマfpを見送った私がα7cを購入検討している理由
いくつか不満点があるものの、α7cは久しぶりに購入を検討するに値する機種だと考えている。
その理由を掘り下げていきたい。
一年余り前、私は「カメラ業界がプロやハイアマファーストでは衰退を早める理由!フルサイズミラーレス競争の残念な結果」と題した記事を書いたが、残念ながら、その後もカメラ業界は衰退の一途をたどっている。
その記事を書いた頃、シグマが小さなフルサイズミラーレスfpを発表した。当初は「これはいいかもしれない」と思ったが、残念なことにファインダーがついていなかった。
別売で、カメラの液晶モニタに装着して液晶モニターを拡大できる専用ビューファインダーも発表されていたが、それを装着すると一気に巨大化する。スチールカメラというより、むしろビデオカメラのようでもある。
もう一点はAF性能に対する信頼感である。
すでにα7Ⅲを使用していた私にはα7第3世代のAFに不満がなかった。一方、fpは未知数。fpの本体370グラムというプロダクトには魅力を感じたが、購入は見送った。
今回発表されたα7cにはあって、fpにはないもの。それはファインダーであり、ボディ内手ブレ補正である。
正直、私は手ブレ補正がなくてもいいのだが、以前、夜間のスポーツ競技撮影で手ぶれ補正のないフジ機を使用して四苦八苦した経験がある。以来、手ブレ補正はあるに越したことはないと考えるようになった。
α7cの機動力をさらに考察
前回、私はこの2〜3年に登場したカメラは多少の違いはあってもどれも優秀であり、スペックの時代は終わって個々人のライフスタイルに合った使い勝手やフォルムの好み、所有欲の刺激で選択する時代が来たのではないかと申し上げた。
想像以上に、多くの方々から賛同のご意見をいただいたが、今回のα7cはどんな用途に合致しているのだろうか?
ソニーの公式サイトではYouTuberが提供動画をアップされているところを見ると、第一ターゲットは動画クリエイターやユーチューバー、動画趣味の人たちであることは明白だ。
しかし、スチール主体のユーザーも魅力を感じている人は少なくないはずだ。
その理由はシステム全体の小型軽量化である。
とかくカメラのサイズについては、ボディのサイズ・重量だけでなく、レンズも含めて比較するのが現実的だ。
ソニーも同じことを考えたようで、公式サイトに人気機種α7Ⅲにキットレンズを加えた比較を掲載している。
α7cはキットレンズも含めて約676g。これは最近、キヤノンから発売されたEOS R5がボディ単体で約650gのなだから、レンズ重量を含めても、いい勝負ということになる。
この軽さの恩恵で思いつくのは、まずは旅行用途、そしてスナップである。
旅行はさきほどバンコク旅行でRX100M5の小型軽量に助けられた話をしたが、α7cにも同じ恩恵を感じる。
旅行やスナップでは大きなカメラとレンズを持って街中を歩くのは気が引けるものだ。「大きなカメラとレンズを向けられたら狙われている感が半端ない」という人がいたが、確かにさもありなんと思う。
私がバルナックライカⅢfでスナップ撮影して感じるのは警戒されないということ。むしろ、「可愛いカメラですねえ」「それ戦前のカメラですか?」と声をかけられ、そこから話が発展し、穏やかな空気を作り出すのである。
買いはしなかったが、以前、店頭でα6600を握った時、可愛らしさを感じたことがある。α7cも同様に警戒感を与えない可愛らしさを感じる。
α7cはコシナやオールドレンズの母艦カメラが似合う
α7cにはもうひとつ可能性を感じる。
それは小型軽量な名玉を次々発表しているコシナのフォクトレンダーやオールドレンズをつけて撮影する姿が似合うカメラではないかという点だ。
オールドレンズの人気を再燃させたのは、変換アダプターでオールドレンズも楽しめるソニーのミラーレスカメラ、特にα7シリーズが原動力になったといっても過言ではない。
最近は、クラカメ、オールドレンズブームのようだ。ライカのオールドレンズは私が買い始めた頃に比べて信じられないくらいの高騰ぶりだ。
現代カメラやレンズが大型化するにつれて、よく映らなくても小型軽量なオールドレンズが魅力なのだ。諸収差があったり、滲んだり、ボケたり、フワフワだったり。現代レンズが苦労して解消してきた部分が逆に味として受け止められている。
小さなオールドレンズと最小・最軽量のフルサイズアルファは、最良の出会いだと感じている。
最後に、ソニーがそうしたオールドレンズ需要を鑑みて、ライカMからニコンSまで、α7c専用の純正変換アダプラーを次々発売したら、α7cはソニーの想像を超えたユーザー層の需要を生み出すのではないか。
話を戻すと、私は旅やスナップだけなく、オールド&コシナレンズとも相性の良さそうなα7cは、久々に出現した購入検討機種だと感じている。
最後に、最も大切な価格だが、10月23日発売予定で市場想定価格(9月15日現在)がボディ単体21万円前後、レンズキットが24万円前後(いずれも税別)。やや強気の価格設定と感じる。
私はいずれ購入するかもしれないが、ちょっと高いと感じる人は待ってもいいかもしれない。デジタルカメラは必ず値下がりするし、そのうちキャッシュバックキャンペーンがあるかもしれない。
株式相場の世界に「休むも相場」という格言があるが、カメラの場合、「待つも相場」である。
コメント
こんにちは、左京様
最後のもう一つの可能性は、赤城耕一さんが書きそうな文章ですね。
よくわかります。
ただ残念ですが、純正変換アダプターは絶対にない話です。保証・互換性の問題から作れないのです。
キットレンズの28mm~はやはり大きな問題です。触手が出ないという私でも、せめて24mmからならば考えるところです。かってEOS 5D(初代)が出た時に、同時にEF24-105mm F4L IS USMという赤城耕一さん曰く「銘玉」が発売され大いに売れました。私ももちろん買いました。あのころからでしょか、ズームは28からではなく24からという世間の見方ができたのは。事実、価格コムの書き込みでも、24からでない失望の声がいくつもありました。
それからα7Ⅲをもう少し超えている部分があってもよかったのではないかということです。α7Ⅲ発売から2年半も経っているのです。あってしかるべきです。ニコンなどは、あまり下剋上を気にしないので、平気で後発が超えていきます。まるでキャノンのやり方です。
左京様はα7Cを買われるのでしょうか?
私はα7Ⅳの登場までは、SONYの追加投資はないかもしれません。
Andantino様
コメント、ありがとうございます。
正直、α7cの購入は迷っています。理由は、すぐに必要としていないこと、もうひとつはほぼα7
Ⅲと同等なのに売り出し価格がやや割高に感じるためです。
ただ、α7Ⅳが発表される頃には、価格も落ち着いているでしょうから、その辺りまで待つかもしれませんし、やっぱり早めに購入しようと思うかもしれませんし、悩ましい機種ですね。
おそらくソニーはα7cについて、動画クリエイターに照準を置いているのだと思います。スチール主体の私から見れば、スペックはα7Ⅲと変わらないと思うのですが、ソニーは小型化やバリアングルに加えて、キヤノンなどで話題になった動画の撮影時間は29分の撮影制限を撤廃して220分まで撮影できるようにしたという点で胸を張りたいのだと思います。
ですから、サイズとオールドレンズとの親和性に魅力を感じた基本的にはスチール主体のユーザーがどれだけ出てくるかどうかが、この機種の売れ行きをもおう人年するかどうか左右すると想像しています。
キットレンズの件ですが、ちょっと調べてみたら、最近、各メーカーから発売された小型軽量なキットレンズは、次のようになっています。
パナソニック S 20-60 mm F3.5-5.6 350g
ニコン NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3 195g
ソニー FE 28-60mm F4-5.6 170g
ズーム領域はパナが理想的ですが、重さはソニーの2倍超となっています。こうしてみると、流石にニコンがいい線なのかもしれません。ソニーはまずはいろいろな考え方の中で軽さ最優先という戦略に振ったのでしょうね。
マウント変換アダプターの件ですが、ご存知だとは思いますが、富士フィルムが純正のXF→Mアダプター「FUJIFILM M MOUNT ADAPTER」を発売しています。
私も所有しているのですが、やはり純正は安心です。最近は中華製をはじめとしてマウントアダプターがたくさん出ていますから、何もソニーが純正を出さなくても不自由はないと思いますが、ひとつの夢物語として記しました。
まあ、この分野は赤城さんの専売特許分野なので、今後、どこかでコラムをお書きになるかもしれませんね。
いつも有意義なコメントありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。