X100V持ちの私がGRⅢを購入した理由とは?
GRⅢには興味がなかったが・・・
いまや、スマホの写真性能は下手なカメラを凌駕する時代だ。
そんな時代に、わざわざ高いお金を払ってカメラを買う理由はなくなってきた。
それでもカメラを買う理由。私の場合、まずはカメラを持つ喜び、撮影する喜びがある。それゆえ、カメラにはデザイン性を求める。カメラにとってデザインは重要な性能だと考えている。
もうひとつは安全性だ。
スマホは写真性能が進化したとはいえ、”個人情報の塊”だ。安心できる場所で撮影する分にはスマホでもいいだろう。しかし、海外や不特定多数が行き交う場所では”個人情報の塊”で無邪気に撮影するのは危険だ。カメラであれば盗まれたとしても経済的損失だけで済むが、スマホはそれだけで済まない。
それでも「常時携帯性」という点でカメラはスマホに遠く及ばない。カメラとレンズ合わせて1〜2kg以上となると、撮影目的がなければ、常時カバンに収納するかどうか躊躇するのが普通の感覚だ。
しかし、カメラがスマホ並みのサイズ感なら話は別だ。常時、携帯する気持ちになる。
そんなカメラがリコーGRⅢだった。
元々、私はGRⅢにさほど関心がなかった。
数年前、会社の後輩が「夏休みを利用して欧州旅行に行ってきます」と報告してきたので、「カメラは何を持っていくの?」と聞いたら、ポケットから「これです」と取り出したのがGRだった。オシャレでもなく、真っ黒なカメラというだけの印象だった。それ以上、関心を持つこともなかった。
2019年、カメラの祭典CP+の招待状をいただいた。リタイア前は仕事が多忙でCP+どころではなかったが、2018年末にリタイアし、時間も有り余っていた。私はLeica C-LUXをバックに入れてCP+に向かった。
その会場で驚くような光景を目の当たりにした。3月15日の発売を前に、多くのファンがGRⅢのタッチ&トライに長い行列を作っていたからだ。正直、あの黒くて小さなカメラがそこまで人気機種だとは思っていなかった。
GRⅢを購入した理由と実機を手にした印象
その後、SNS等でGRⅢで撮影した写真を目にする機会が増えた。
私の心を動かしたのはモノクロ写真。20代の頃、カメラを仕事に使い、納品は全てモノクロだったから、リタイアした今もモノクロ写真は気になる。
GRⅢが吐き出すモノクロ写真は階調の繋がりが素晴らしく、とても10万円前後のコンデジとは思えなかった。
今年はライカがモノクロ専用機M10モノクロームを100万円ほどで発売し、コンデジQ2版のモノクロームQ2Mも70万円ほどで発売した。
いずれも4000万画素以上の高画素機。写真家の野村誠一さんがM10Mで撮影したモノクロ写真は、さすがに階調豊かでが素晴らしいと感じたものの、Q2Mよりは過去に発売されたMMやM9Mの作例の方が心に刺さった。
いろいろ考えた末、私が出した結論は「GRⅢで十分なんじゃない」だった。
GRⅢが届いた夜、早速、撮影に持ち出した。
「私が欲しかったのはこれですよ」と思ったのが次の写真。クロ、灰色、白のバランスが美しく、しかもシャープだ。(GRⅢの作例は後半で多数掲載しています)
GRⅢについては意外だった事もある。
10万円ほどで総重量250gのコンデジなので、ペコペコで安普請なボディを覚悟していた。ところが、手にしてみると、塊感があり、安っぽくは感じなかった。
手にした瞬間、「良いモノ感」が十分感じられるカメラだった。
APS-Cセンサーの人気コンデジ対決!GRⅢとX100Vは何が違うのか?
スナップの際、私はフィルムカメラとX100Vをバックに入れている。2〜3時間歩き回るので、双方で1.5kg前後に抑えたい。フィルムはバルナックライカ、ライカM3、M4、あるいはNikonSP。デジカメはX100V、デジタルライカ。この選択が楽しい。これなら1.5kgにも満たない。
ただ、GRⅢを導入したことで、一層、軽量化が進みそうだ。GRⅢはX100Vと比べて、写真の通り、さらに小さい。(上がGRⅢ、下がX100V)
GRⅢはズボンのポケットに入れて持ち運べる。しかも、無理せず、ポケットに入る。被写体を見つけたら取り出すと同時に電源ボタンを押して0.8秒後にはシャッターを切れる。この速射性が魅力だ。
一方、X100Vはおしゃれなストラップをつけ、フィルムシミュレーションを選んで、「懐かしい色味の写真が撮れた」「エモい写真が撮れた」と喜ぶカメラだ。もう少しお行儀の良いカメラなのかもしれない。
というわけで、両機のスペックを比較したい。
機種名 | RICOH GR III | FUJIFILM X100V |
---|---|---|
画素数 | 2424万画素 | 2610万画素 |
開放F値 | F2.8 | F2.0 |
撮影感度 | 通常:ISO100~102400 | 通常:ISO160~12800 |
焦点距離 | 28mm(35mm換算) | 35mm相当(35mm換算) |
最短撮影距離 | 10cm(標準)、6cm(マクロ) | 10cm(標準) |
ファインダー | なし | ハイブリッドビューファインダー |
オートフォーカス | 像面位相差検出+コントラスト検出のハイブリッド方式 | TTLコントラストAF+位相差AFのインテリジェントハイブリッド |
手ぶれ補正 | 3軸4段(撮像素子シフト方式) | なし |
起動時間 | 0.8 秒 | 約0.5秒 |
液晶モニター | 3インチ・103万ドット、タッチパネル | 3インチ・162万ドット、チルト式 |
電池寿命(撮影枚数) | 約200枚 | 約350枚 |
動画撮影サイズ | Full HD(1920 x 1080、60p/30p/24p) | 4K(3840×2160、29.97p/25p/24p/23.98p ) Full HD(2048×1080) 59.94p/50p/29.97p/25p/24p / 23.98p ) |
幅 x 高さ x 奥行き | 109.4×61.9×33.2 mm | 128×74.8×53.3 mm |
重さ(バッテリーなど含む) | 257g(本体のみは約227g) | 478g(本体のみは428g) |
発売日 | 2019年3月15日 | 2020年2月27日 |
価格 | 9万7801円 | ¥15万3090円 |
価格は12月11日現在のマップカメラ相場 |
両機の弱点にも触れておきたい。
まず、GRⅢは2つ。
①バッテリーの持ちが悪い。予備バッテリーが必要かもしれないが、容量が少ない割には4000円と高い。
②ファインダーがない。背面液晶で構図を確認して撮影するスタイル。
③近頃のデジカメとしては申し訳程度の動画性能。動画はスマホの方が優秀だ。ただ、動画目的でGRⅢを買う人はいないだろうから、この割り切りは好感が持てるかもしれない。
次に、X100V。
弱点は手振れ補正が未搭載という点。夜間撮影はさすがに辛いと思うことがある。手振れ補正は次機種に期待したい。
X100Vの不満点はそのくらい。手振れを除いて基本性能は最上位機種と変わらない。クラシックネガなど豊富なフィルムシミュレーションが使え、フィルム時代のような写真を吐き出すのだから手放せない。
カメラというのは、欠点をどう克服するか、あるいは割り切るか、その過程が楽しい。
「あれもこれも」と、高機能・高性能を求めると、結局、大きく重い不細工なカメラが出来上がる。機能は不足気味でも、小さくてカッコいいカメラが私は好きだ。
APS-Cセンサーのコンデジでは、この両機は最上位に君臨する双璧だ。どちらを購入しても後悔のない名機だと思う。
「自分に似合うカメラはどちらのか?」あれこれ考えるのも楽しいし、私のように面倒になって両方買ってしまうバカもいる。
GRⅢに手振れ補正搭載がされた恩恵は夜撮影・カラーとモノクロ作例
GRⅢは最高の散歩カメラだった!カラー作例
今回、新たに導入したGRⅢは、到着直後、夜撮影に持ち出した。
このGRⅢから初めて3軸4段の手振れ補正(撮像素子シフト方式)が搭載された。にもかかわらず、よくぞ、総重量250g程度の重量にとどめることができたものだと感心する。
初めて夜撮影した作例を紹介したい。結論から言うと、手振れ写真は皆無となり、圧倒的に歩留まりは増した。
まずは、カラー写真。イメージコントロールはスタンダードを選択、Jpegで撮影した。
手振れ補正の効果は抜群で、夜でも安定した写真を吐き出してくれる。「250gのコンデジGRⅢで十分じゃないか」。そう思える撮影結果だった。
GRⅢの最大の魅力はモノクロの描写力!ソフトモノトーン作例
次に、モノクロ写真。GRⅢは、イメージコントロールから「モノトーン」「ソフトモノトーン」「ハードモノトーン」「ハイコントラスト白黒」の4パターンを選ぶことができる。
最近は「ハードモノトーン」のような白黒写真を目にする機会が多いが、今回の作例は「ソフトモノトーン」で撮影した。
次の2枚は薄明かりの中で撮影したものだが、しっかり解像し、階調も豊かだった。GRⅢのモノクロはやはりいい。
撮影者:GRⅢ
撮影補助:SAKYO
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