軽量コンパクトは正義!α7Cを購入した理由
メーカーのスペック競争に惑わされないための視点とは?
使いもしない高スペック・高機能で肥大化したカメラは不要だ
最近、レンジファインダーを中心にコンパクトなフィルムカメラの使用頻度が増えてきた。
旅行の際に観光地では軍艦部のあるカメラでも違和感は比較的希薄だが、日常的な街では何か違和感を感じる。
「なぜだろうか」と考えてみると、スナップに持ち出すことには心理的な抵抗感があるからだ。
- 街中で他人に威圧感を与える感じがする
- 軍艦部つきの一眼カメラはバックに収納する際に嵩張る
- 2〜3時間の長時間スナップにレンズを含めた重量が体にこたえる
- なんとなく持ち出すには「ヨイショ」と気合が必要
つまりは、外に持ち出しづらいのである。
ミラーレスは一眼レフに比べて軽量コンパクトが利点にもかかわらず、多くのユーザーの希望を盛り込み過ぎているせいか、最近のミラーレスカメラは高機能・高性能とトレードオフでどんどん肥大化している。
しかも、レンズも明るさと解像感を追求した結果、重く大きく、カメラとレンズを合わせて1kg以内に収まる機材は意外に少ない。
スタジオ撮影や野鳥撮影ならわからないでもないが、ストリートスナップで、そんなカメラを振り回していたら、多くの人たちに不審な目で見られ、警察の職質を待っているようなものだ。
写真家赤城耕一氏の問題提起とカメラの未来
と、思っていたら、最近、写真家の赤城耕一さんが、最近のデジタルカメラに対するアンチテーゼ的著書を出版した。
「フィルムカメラ放蕩記」
「写真家アカギ、静かに吠える」というサブタイトルまで振ってある。
何に対し静かに吠えたのか、早速、購入して読んでみた。
本書は赤城さんが廃刊となった「アサヒカメラ」で20年間書き綴ったフィルムカメラにまつわるコラムをベースに、デジタル全盛のいま、あえてフィルムカメラの魅力を綴ったものだ。
ただ、読み進んでゆくと、赤城さんのこれまでの人生、足跡の記述に行き当たる。
第3章「私とカメラとカメラ雑誌のこと。それから、最後の『アサヒカメラ』に書き忘れたこと。」が、それである。
最後に、デジタルカメラよりもフィルムカメラを持ち出す理由に触れている。
私もカメラを仕事で使っていた時はデザインよりも強靭さと性能を重視した。
しかし、現在、趣味の撮影に興じている私にとって、赤城さんの問題提起は趣味カメラを選ぶ際の本質に触れていると感じた。
すでにフィルム撮影している人だけでなく、これからフィルムカメラを始めたいという人にとって、余計な機材を買わずに済む良書だと思う。
ぜひ、一読してほしい。
私がSONYα7Cを購入した理由
というわけで、本題に入りたい。
自分自身で設定を決めて撮影し、現像と写真の仕上がりを待つフィルムカメラは、不便さを楽しむ醍醐味がある。
私はスナップに出かける際には、フィルムカメラとデジタルカメラ両方をバックに入れて出かけている。
撮影結果を素早く知るデジタルと、古いカメラとレンズの描写力に驚くフィルムカメラの醍醐味双方を楽しみたいからだ。要するに欲張りなのである。
ただ、レンズ付きのカメラを2台、バックに入れるとなると、結構な重量になる。この重量をいかに減量化するか、長時間の撮影には重要なテーマだ。
この10月、ソニーがバッテリー込みで約500gという軽量コンパクトなフルサイズミラーレスα7Cを発売した。
数あるフルサイズミラーレスの中では小型軽量と言われてきた人気機種α7Ⅲより150g減量化した機種である。つまり、150g前後のレンズを使えば、α7Ⅲのボディ重量と同じ。相当な減量化になる。
キャッチフレーズは「もっと自由なフルサイズへ」
フルサイズでもコンデジのように自由に持ち歩こうということか。
今年は各社ともスペック盛り盛りの新機種が相次いだ。ソニーは昨今のカメラ業界でスペック競争のトップランナーであり、火付け役だ。
そのソニーが一転、2年以上前に発売されたα7Ⅲと同じセンサーを搭載した製品を発売したのだから、「コンパクトなフルサイズは大歓迎」「20万円のカメラにしては古臭いスペック」と賛否両論が噴出したのは当然かもしれない。
しかし、私は購入した。
その理由はただひとつ。軽量コンパクトはスペックに勝ると考えたからだ。
私は高画素機のα7Ⅲと標準機のα7Ⅲを所有している。どちらもスペックや性能に不満はない。ただ、α7Cの方が外に持ち出す機会が増え、結果的に有用なカメラになると直感した。
賛否両論のなか発売されたα7Cだったが、購入後、意外なことが2つあった。
私が実感したα7Cの魅力と趣味カメラとしての拡張性
前評判と裏腹に人気No1に躍り出たα7C
ファインダーと手振れ補正が搭載されたフルサイズとしては世界最小最軽量と銘打って発表されたα7C。前評判は決して芳しいものではなかった。
例えば、DPReviewは「高画質でAFも優秀だが、小さなEVFがマイナスポイント」(参考)と指摘。Photography BLOGは「取り扱いと仕様の両方の点ですでにかなり時代遅れ」(参考)と辛口の批評も飛び出し、アンチ・ソニー派を大いに喜ばせた。
ところが、蓋を開けてみると、消費者はα7Cを選択した。
CAPA CAMERA WEBは、10月下期のヨドバシカメラ売れ筋ベストテンを掲載。1、2位をα7Cのレンズキットとボディ単体が独占したことを報じた。(参考)
- 第1位 ソニー α7C ズームレンズキット
- 第2位 ソニー α7C ボディ
- 第3位 ソニー α6400 ダブルズームキット
- 第4位 キヤノン EOS R6 ボディ
- 第5位 キヤノン EOS R6・RF24-105 IS STM レンズキット
- 第6位 ソニー α7 III ボディ
- 第7位 ソニー α7S III ボディ
- 第8位 ソニー α7 III レンズキット
- 第9位 ソニー α7R IV レンズキット
- 第10位 ニコン D5600 ダブルズームキット
続いて、マップカメラも10月1カ月間のランキングで、10月23日に発売されたばかりのα7Cがいきなりトップに躍り出たことを発表した。
- 1位 ソニー α7C
- 2位 ソニー α7S III
- 3位 キヤノン EOS R5
- 4位 キヤノン EOS R6
- 5位 パナソニックLUMIX DC-S5
- 6位 ソニー α7 III
- 7位 富士フイルム X-T4
- 8位 ソニー VLOGCAM ZV-1
- 9位 DJI Pocket2
- 10位 ソニー α6400
大手カメラ量販店2社が同じ結果だったところをみると、α7C人気は本物のようだ。
マップカメラの解説が消費者の動向を知る上で興味深い。
一般ユーザーが注目しているのは、スペック以上に手にした時のフィーリングであり、扱いやすい大きさ、重さであることがわかる。
私も購入後、最初に感じたのは「これならバックに入れても嵩張らず、楽に持ち歩ける」という感覚だった。
私の好きなレンジファインダーM型ライカは重量があるが、それでも軍艦部がないだけでバックの収納は楽になると実感していた。
そのライカよりも150〜200gも軽量なのだから、気軽に持ち歩ける今時のフルサイズミラーレスを手に入れた気分だった。
スナップの描写力は問題なし!課題はレンズ選び
α7Cについて、α7Ⅲや他メーカーのカメラとの比較論を語る向きもあるが、正直言って、ナンセンスだと思っている。
なぜなら、このカメラは別ジャンルのカメラだと考えているからだ。
TOYOTAのSUVランドクルーザーとBMWのMINIを比較するようなものだからである。
そうは言ってもα7Ⅲと同価格帯だし、比較してみたいという気持ちも分からないではない。
私の個人的感覚では、α7Ⅲが優れているのはファインダー。一方、α7CはAFと動画機能が進化している。
画質については、某プロカメラマンが「センサーが同じなのに絵作りは全く違う。α7Cはα7RⅣに寄せている」と話していたが、私はα7RⅣを使ったことがないので分からない。
画質については、JPEGで撮影した作例を掲載するので判断してほしい。
なお、α7Cはキットレンズ付きをおすすめする。
このキットレンズ(FE 28-60mm F4-5.6)、F4スタートと決して明るいわけではなく、画角も広角28mmから望遠60mmと中途半端感もある。しかし、スナップや家族用途には抜群に便利だ。
キットで購入したら約2万円程度の追加で済む。胴体にチープさはあるが、隅々まで解像する。何よりもコンパクトなのが良い。α7Cの自由さ便利さを増幅してくれる。
α7CとキットレンズFE 28-60mm F4-5.6で思い出の地を撮影
α7Cを手にして最初に思ったことは何か?
「子供たちが幼いころにこんなカメラがあったら、どれだけ便利だったか」という思いだった。AFが爆速、持ち出しも苦にならない。旅行や公園遊びのスナップには打って付けの機材だと思った。
と考えているうちに、私の足は長男を遊ばせた世田谷公園(世田谷区池尻1丁目5番27号)に向かっていた。
木々は色づき、秋の装いを感じさせた。
望遠端(60mm)で寄ってみた。
JPEGのスタンダードが上品で心地よい色だった。
世田谷公園の名物のひとつがミニSL「ちびくろ号」。息子も大好きだった。レンガ色の駅舎が近づいてきた。落ち葉を踏みしめる音だけが聞こえた。
平日だったせいか、コロナの影響なのか、駅舎は閉じていた。
α7Cには面倒なRAW現像は似合わない。カメラ内のクリエイティブスタイルで好みの色を選んでJPEGでカジュアルに撮影する。これがいい。白黒、セピア、スタンダードの順に撮影した。
なお、ビビットを選ぶと、秋に咲いた花も鮮やかに記憶される。
このα7C、白黒も階調がしっかり出てなかなかいいと感じた。表情を変える噴水。ついつい撮影枚数も増える。
セピアで撮りたくなる場面だってある。
公園の片隅にあったオブジェ。キットレンズの解像感が分かる。
少し肌寒さを感じ始めた夕暮れ。野球場の照明に火が灯った。心地よい疲労感とともに帰路についた。
撮影者:SONY α7C+FE 28-60mm F4-5.6
撮影補助:SAKYO
α7Cは最高のスナップカメラだった!
正直言って、α7Cはさほど期待していたカメラではなかった。
前評判は芳しくなかったし、小型軽量といえども発売時はキットレンズと合わせて22万円超という値段である。
30万円、40万円台が珍しくなくなった昨今のフルサイズミラーレスの中では、安価な部類に入る。あれもこれも期待するほうがどうかしている。
ただ、他人の評価や世間の評判は別として、自分自身、手にして確かめてみたかった。
カメラという機材は良し悪しが万人に共通ではないからだ。
人によって用途も異なれば、好みの色や絵作りも異なる。まずは使ってみないことには話しは始まらないと思い購入したのだが、ことのほか、私にとって秀逸なカメラだった。
このカメラの最大の売りであるサイズ感だが、富士フィルムの人気コンデジX100Vと比較してみた。
ボディはX100Vより小さい。ただ、さすがに厚みはある。
フルサイズとAPS-Cのカメラサイズを比較するのは、ややα7Cには酷だと思ったが、なかなか良い勝負をしているのだ。
ただ、α7Cの課題はレンズ選びだ。カメラを重く大きくするのはボディ以上にレンズである。とくにミラーレス用のレンズはF値などスペック競争の末に巨大化傾向にある。
私が現在、α7C用に想定している手持ちレンズは以下の通り。300g前後から100g台の小型軽量レンズだ。
まずはオートフォーカス(AF)レンズから
- FE 28-60mm F4-5.6(キットレンズ)
- FE 35mm F1.8(SEL35F18)
- Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA(SEL35F28Z)
- Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA(SEL55F18Z)
次に、マニュアルレンズ
- Summilux-M 50㎜ F1.4 1st(1959年)
- Elmarit-M 21㎜ F2.8 Ver1(1983年)
- NOKTON classic 35mm F1.4
- Voigtländer ULTRON vintage line 35mm F2 Aspherical
- Summicron-M 35mm F2 ASPH. (6bit)
- Summicron-M 50mm F2 (6bit) 現行
MFレンズは、ライカかコシナのMマウントレンズが中心。変換アダプターを介して使用することにしている。
とくに、α7Cは「Voigtländer ULTRON vintage line 35mm F2 Aspherical」と、そのレンズフード(LH-12)を取り付けた姿が美しい。
α7CはAFが迅速で撮影が実に楽な機材だが、一方でライカやオールドレンズなどマニュアルレンズの母艦カメラとしてゆっくり撮影を楽しむ、もう一つの趣向もあると感じている。
ただ、普段使いとしては、純正のAFレンズが便利だ。
F値が明るい大きなレンズもいいが、ソニーにはF値は暗めで構わないから小洒落たレンズ作りを一層期待したい。
ソニーもまた、「もっと自由なフルサイズへ」という発想で商品開発を深化させて欲しい。
コメント
左京 様
こんにちは。
お疲れ様です。
拝見して、a7Cの良さ、意味がよくわかりました。お散歩カメラとして、コンテジやAPS-Cカメラでは嫌な時のベストカメラであるということです。
a7Cのa7Ⅲと比較してよく言われていることは、
・メモリースロットの数
・メニューボタンの位置
・グリップ
であり、それらは人によっては大きな問題にはなりません。
肝心の画質については、後発なだけにa7Ⅲを圧倒しているようです。今回もお写真でも最後の2枚は素性の良さがよく出ています。
キットレンズの描写はキットレンズとは思えないものですが、やはりPanasonicのように20mmかせめて24mmからにしていれば、更によかったのにと思います。
あ、本題から外れますがコシナのレンズって本当にカッコいいですね。
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赤城耕一さんの本、さっそくアマゾンでポチリました。
かってアサヒカメラ誌のQ&Aで、「写真家になるのはどうしたらいいですか?」の質問に対して、「簡単です、写真家という名刺を作ってください。その日から貴方は写真家です」という迷回答をされて以来、氏のファンです。
Andantino様
私がα7Cに魅かれた理由を理解していただき、ありがとうございました。
スペックは程々でいいので、気軽なフルサイズのスナップカメラを探していました。α7Cはファインダーがあり、手振れ補正も搭載。しかも、小型軽量なので、これに決めた次第です。
スペックも程々とはいいながら、スチール機としては必要十分ですし、動画も4K24P(映画版)なら30ふん以上の連続撮影が可能というレビューもあり、なかなかのものです。スペック上には出てこない描写力にも満足しています。
レンズ遊びの件ですが、最近のマイブームはコシナのレンズです。MFレンズですが、さすがメイドインジャパンの伝統的な会社だけあって品質も申し分なし。オールドレンズと違って、ヘリコイドの状態や曇り・カビを心配しながら購入する必要がない点が気楽です。
コシナの魅力はなんと言ってもデザイン性で、社長さんがライカ好きらしく、ライカのオールドレンズをオマージュし、ブラッシュアップした製品も見受けられます。小さく高性能なMFレンズで撮影を楽しむにもα7Cのサイズ感は優れていると判断しました。
今回、写真に掲載した「Voigtländer ULTRON vintage line 35mm F2 Aspherical」はF値が2なのであまり注目されていませんが、別売りの専用フードを取り付けると、実に素晴らしい姿になります。私が現在、最も気に入っているコシナのレンズです。
最後に、最近発売された赤城耕一さんの著書「フィルムカメラ放蕩記」は、赤城さんによると、第3章「私とカメラとカメラ雑誌のこと。それから、最後の『アサヒカメラ』に書き忘れたこと。」が最も書きたかったことだったそうです。カメラ・写真に真摯に向き合ってきた人生とともに、最近のデジタルカメラへの問題提起は私も共感しています。
有意義なコメント、本当にありがとうございました。