アポズミクロンは「ライカが世界一のレンズを生み出すメーカーの地位を揺るぎないものにするレンズ」
2021年の抱負と私が考えるカメラを楽しむ方法
あけましておめでとうございます。
残念ながら、新年もコロナ禍が続き、しかも過去最悪を迎えるなかでスタートした。現在、政府が緊急事態宣言を表明するのは確実視されている。
カメラ趣味人にとって旅行の機会が制限され、撮影の場は減少しそうだ。しかし、悪いことは永遠に続かない。「朝の来ない夜はない」と前向きに考えたい。
このところ、プロカメラマンは経済的危機に瀕しているようだ。最近はカメラマンや写真家が相次いでユーチューブに動画を上げている。少しでも動画コンテンツで稼ぎたいのだろう。
撮影の実力が不透明な人物が盛んに機材コンテンツを配信し、有料動画に引き込んだり、高額な写真やグッズを販売するといった信者ビジネスを展開する姿も見受けられる。優良誤認など景品表示法違反でもない限り、だれも止められない。メーカーだけでなく、個人もカメラ・写真業界は断末魔の様相だ。
そんな時代だからこそ、カメラ趣味人のリテラシーを高め、健全な趣味として楽しむ文化を広めたい。これが私のささやかなる願いだ。
私も何年生きられるか分からない。しかし、若い人たちには「こんなはずではなかった」と後悔する人生を送ってほしくない。そんな思いで当ブログを執筆している。
以前にも申し上げたが、高額機材を購入したからプロになれるわけでもなければ、カメラがお金を生み出すわけでもない。むしろカメラは懐を寂しくする消費財と考えて向き合う程度がちょうどいいと思っている。
SNS上には、写真家を目指す人たちが、日々、写真を配信している。写真雑誌が衰退したいま、個展に手が届かない彼らが発表する場はデジタル空間しかないのかもしれない。ただ、SNS配信だけでは、何年やっても一生食べていけるような収入は得られない。
優れた写真家になるには、写真以外の仕事で大金持ちになってカメラは趣味として楽しむくらいの発想の転換が必要だと思う。写真で生計を立てようとすると、生活苦から好きなカメラまで嫌になる恐れがあるからだ。
前回、紹介した「激論!間違いだらけのカメラ選び」で、プロの写真家たちが同じことを話していて、長年、カメラ写真業界に身を置いていた人たちはその厳しさを実感していると改めて感じた。
元アサヒカメラ編集部員の猪狩友則さんと写真家の赤城耕一さんが次のように発言している。
猪狩:学生さんに「写真家で生きていきたいと思うんですけど、どうしたらいいですか?」って聞かれて、金持ちの奥さんをつかまえろ!って言ったら、ふざけないでください!とか言われたんだけど、でも、それが一番大切だみたいな。
赤城:土田ヒロミさんが写真作家になるための条件として、お金持ちであること、と言ってました。でも、そうだろうなと思ったよ。(引用:「激論!間違いだらけのカメラ選び!!」)
※土田ヒロミさんは土門拳賞受賞作家
プロと違って、趣味カメラマンは経済的・精神的に気楽だ。気楽だからこそ、撮影を純粋に楽しむことができる。趣味カメラこそ、私は最強だと考えている。
というわけで、本題に入りたい。
アポズミはライカレンズの描写力を不動の地位に固定した
今年の元日はLeica M10-Pにアポズミ(APO Summicron 50mm F2 ASPH)をつけて初詣に出かけた。参拝したのは、渋谷区代官山にある猿楽神社。密を避け、マイナーな小さな神社を選んだ。
アポズミはライカ最高峰レンズと言われるが、帰ってから撮影した写真を見てみると、その圧倒的な描写力に改めて感心した。100万円以上のレンズなのだから、圧倒的な描写力は当然なのかもしれない。
しかし、カメラ・レンズの世界は必ずしも価格と性能は一致しない。最近は、オールドレンズを嗜む人が増えて、むしろ良く写らないレンズが高額だったりするから、余計に価格と性能の比例概念が薄れてきていいる。
アポズミクロンの特徴は描写性能と解像性能だ。色収差を抑え、細部まで自然再現する性能は記録撮影やスナップに極めて適したレンズだと感じている。
ライカは公式ホームページで次のように解説している。
どのような撮影シーンでもすみずみまできわめてシャープに、ディテールまで鮮明に描写できる新設計のレンズです。 一切の妥協を許さず、従来のレンズの限界を打ち破り、描写性能の新基準を打ち立てます。光学的計算から素材の選定、緻密で高度な製造方法、最終的な仕上げまで、設計から製造までのすべてのプロセスが見事に作用し合い、高い性能が実現しました。ライカ アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH.は、光学機器の設計・製造で160年以上にわたる歴史を誇るライカが、世界一のレンズを生み出すメーカーとしての地位をさらに揺るぎないものにするレンズです。(Leica公式ホームページより)
2021年はコロナ禍が収束し、安心して旅行や撮影を楽しめる年になって欲しい。ライカの中でも贅沢なシステムで願掛けに出かけた。
2021年はM10-PとAPO Summicron 50mm F2 ASPHで初撮り
目黒区役所前から代官山・猿楽神社をスナップ撮影(作例)
2021年最初のスナップ撮影は、目黒区役所前を出発し、渋谷区・代官山の猿楽神社を目指して歩いた。
目黒区役所は、村野藤吾が設計した旧千代田生命保険本社ビルを買収し、役場として住民サービスに活用されている。1966年に建設された建物だが、いまだにモダンだ。
目黒区役所前から、見上げた光景がまた爽やかだった。
区役所前の「中目黒しぜんとなかよし公園」は木々が広がり、広島市から寄贈された平和の石や落ち葉を土に戻すための「落ち葉ンク」もある。
駒沢通りを隔てた向かい側には、某女優さんが愛するちゃんこ屋「芝松」が見える。
山手通り側に歩いていくと、2016年に中目黒に進出した「ニトリ」が見えてきた。
私はその向かい側の道を歩いて目黒川を目指した。ふと足元を見ると、イチョウの葉が積み上がっていた。
真昼間の目黒川。コロナ禍の元日、ひっそりしていた。こんな目黒川もいい。
子供たちの楽しそうな声が聞こえてきた。
目黒川沿いのお店はほとんど閉店。それでも、フォトジェニックな光景が続いた。
右端にピントを合わせても歪みはなし。
縦位置・右側に焦点を合わせてみた。やはり諸収差はなく、左側の背景ボケはほどよく情報を残していた。
目黒川を離れ、代官山方面への坂道を登った。周辺には大邸宅が並ぶ。
しばらく歩くと、昭和を代表する歌謡界の女王・故美空ひばり邸が見えてきた。現在は美空ひばり記念館。
美空ひばり記念館の真向かいがエジプト大使館。旧山手通りに出ると、エジプト大使館らしいオブジェが私を迎えてくれた。
目的地の猿楽神社はもうすぐ。それにしても代官山の建物は壁もアートだ。
エジプト大使館の次はデンマーク大使館。エンブレムもオシャレだ。
デンマーク大使館を過ぎて、集合住宅、店舗、オフィスなどから成る複合施設ヒルサイドテラスに到着した。このなかに、猿楽神社はあった。古墳時代末期の円墳の上に鎮座する極めて小さな神社である。
お賽銭箱はなく、誰かがカップ酒をお供えしていた。
お願い事も叶えてくれそうだ。参拝を済まして、再び、旧山手通りに出た。私の好きなカフェテラスも休んでいた。
車や人の往来も少なく、赤いポルシェがひと際目立っていた。
撮影者:M10-P+APO Summicron 50mm F2 ASPH.
撮影補助:さきょう
アポズミは隅々まで収差がなく上品な再現力と描写力を感じさせる
できる限り作例を掲載したが、全体的に実感したのは、まずは収差の少なさである。目黒区役所の総合庁舎をはじめ、建物の描写は隅々まで歪むことなく鮮やかに描写してくれた。
一方で、描写が硬いかというと、目黒川沿いのお店は優しい描写だ。さらに、猿楽神社で撮影した写真を見ると、前ボケや背景ボケは上品であり、情報もしっかり残している。
ライカは「アポクロマートレンズを採用しているので、色収差を抑え、すべてのディテールを自然に再現します」と説明しているが、嫌味のない自然な再現というのがアポズミの特徴だと思う。
おそらく、このレンズは一生持ち続けるだろう。オールドレンズの味がどうだこうだと蘊蓄(うんちく)を語って様々な50㎜レンズを買い漁るより、このレンズ1本で勝負してはどうか。経済的な余裕がある人には、そう言いたくなるレンズだ。
というわけで、ライカが誇るアポズミとともに歩いた初詣をお伝えしたが、次回はSummicron 35mm F2 1st 、通称・8枚玉でのスナップ撮影を伝えしたい。
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