ポートレートの銘玉「AI AF Nikkor 85mm f1.4D (IF)」は抜群のスナップレンズだった!フィルム時代の大口径レンズが魅力的な理由(D850撮影の作例あり)

Nikon SP F3 D60 D850
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なぜ、フィルム時代の「AI AF Nikkor 85mm f1.4D (IF)」に魅力を感じたのか?

単なる大口径レンズとは異なる性格が付与された銘玉

当ブログの読者はお気づきだと思うが、最近はD850にFマウントレンズを装着して撮影する頻度がとても増えた。

ニコンを代表する高画素機D850は、自然かつ素直な描写であったり、芳醇でリッチな描写だったり、実に写真の仕上がりが楽しいからだ。もちろん一眼レフならではのシャッター感覚やファインダーの気持ち良さもある。

ただ、それに止まらない魅力をFマウントレンズには感じている。

時代は一眼レフからミラーレスに大きく舵を切っている。一眼レフ時代のFマウントは過去の遺産になりつつある。

だからこそ、その描写力や表現力を確かめておきたいと、D850とFマウントレンズで撮影を楽しんでいるのだが、廉価版と言われるf1.8の単焦点やf値変動の便利ズームでも私の用途には全く不満がない。

私はかねてから廉価版のレンズにこそ、そのメーカーの底力が垣間見えると考えているが、ニコンは廉価版レンズであっても手抜きを感じない描写だった。これこそニコン品質であり、ニコンは優れたレンズメーカーであることも改めて実感した。

さて、今回はそのFマウントの中でも、私が最も気になっていた、しかも、最も手に入れたかったレンズを紹介したい。

それは、銘玉「AI AF Nikkor 85mm f1.4D (IF)」である。

銘玉「AI AF Nikkor 85mm f1.4D (IF)」誕生の背景

ニコンファンのみならず、カメラファンなら、一度は設計・製造のエピソードや特長を綴った「ニッコール千夜一夜」を読んだことがあると思う。

このレンズは、その第41話に「ポートレートの定番レンズ、現役ニッコールの代表選手」と題して登場する。

ポートレートの定番レンズ、現役ニッコールの代表選手 Ai AF Nikkor 85mm F1.4D (IF) | ニッコール千夜一夜物語 - 第四十一夜 | Enjoyニコン | ニコンイメージング
第四十一夜は、ポートレート用として愛用者の多いAi AFニッコール85mm F1.4D (IF)を取り上げます。

レンズ設計をまとめあげたのは千夜一夜に度々登場する大下孝一氏である。1992年初夏に設計をスタートし、1995年冬に量産開始なので、製品化まで約3年を要したことになる。

どうして、それだけの月日が必要だったのか?

千夜一夜には、次のように記述されている。

大下氏は単なる大口径レンズを設計するのではなく、特にポートレートに最適な描写特性をもった大口径中望遠レンズの開発に心血を注いだのです。歴代の名レンズのボケ味と描写特性を研究し、最適な収差バランスを見出し、更にAFシステムとのマッチングを考慮した、新しいレンズタイプ、新しいフォーカシング方式を創造しました。彼はインナーフォーカスの手法を取りつつ、結像部分のシャープネスを維持したまま、ボケ味を良くする策を見出したのです。その回答がAi AFニッコール85mm F1.4D (IF)だったのです。   (ニッコール千夜一夜 第41話より)

私のニコンイメージは、新聞・通信社に選ばれただけあって、しっかり堅実に描写するというものだ。

しかし、そのニコンが歴代の名レンズのボケ味を研究した末に、独自の特性を付与した大口径レンズとして完成させたのが「AI AF Nikkor 85mm f1.4D (IF)」である。

ニコンは、その後、プロの写真家に人気の「AF-S Nikkor 58mm f/1.4G」「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」など、「三次元的ハイファイ(高再現性)」思想の大口径レンズを発表するが、その源になったレンズとも言われている。

ニコンが理想とする設計思想「三次元的ハイファイ(高再現性)」は、単にピントが合っている部分の解像力やコントラストを引き上げるだけではなく、ピントが合っているところから、ぼけかけたところ、完全にぼけたところまでの連続性を重視し、立体感の向上を図っています。 (AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E EDの製品特徴より)

フィルム時代に誕生した「AI AF Nikkor 85mm f1.4D (IF)」はポートレートの定番ではあるが、スナップ撮影に活用したら、どんな表現になるのだろうか?

このレンズは私の好奇心を強く刺激してくれた。

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歴史的な大口径レンズは比較的軽量!しかも、思いのほか安く買えた

作例の前に「AI AF Nikkor 85mm f1.4D (IF)」(Dレンズ)について簡単に説明したい。

目安として、このレンズの15年後に発売されたGレンズ「AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G」を比較対象に選んだ。

AI AF Nikkor 85mm f1.4D (IF) AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
発売日 1995年 2010年
レンズ構成 8群9枚 9群10枚
絞り羽根枚数 9枚(円形絞り) 9枚(円形絞り)
最短撮影距離 0.85m 0.85m
フィルター径 77mm 77mm
サイズ(最大径x長さ) 80×72.5 mm 86.5×84 mm
重さ 550g 595g
新品価格(マップカメラ) 19万2800円
中古相場 6万円前後 12万円前後

「AI AF Nikkor 85mm f1.4D (IF)」はGレンズに比べてサイズがやや小ぶりで重量も45gほど軽い。それ以上に異なるのは中古相場。約半額で入手できる。

最近の大口径レンズは一様に大きく重く、そして高額だが、このレンズは少し趣が違う。

ただ、実際に手にすると、レンズがぎっしり詰まっているような塊感がある。それゆえ高級感も感じた。ボディ重量1kgのD850に取り付けても、重量バランスも悪くない。長時間のスナップにも使えそうだ。

フードを装着すると、こんな感じになる。悪くない。

ちなみに、フードは鉄製。高級感もある。Gレンズに比べ、フィルム時代のDレンズ群が優れていると感じる点だ。さらに絞り環もあるのも魅力的だ。

Dレンズは絞り環があるので、F3など古いMFのフィルムカメラで使用することも可能だ。「AI AF Nikkor 85mm f1.4D (IF)」のプロフィールは、だいたい分かって頂けただろうか。

では、作例を紹介したい。

「AI AF Nikkor 85mm f1.4D (IF)」に感じた優しく自然なボケ味と高再現性

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代官山の緑が精細かつ優しく表現された

私にとって、今回のテーマはポートレートの定番レンズをスナップに活用できるかどうかだ。重量感など使い勝手と描写力の両面で確かめたかった。

「AI AF Nikkor 85mm f1.4D (IF)」が到着した日、梅雨時の雨がやんだ。早速、D850に装着し、スナップ撮影に出かけた。

撮影前、懸念していたことがあった。D850は有効4575万画素だ。そんな高画素機にフィルム時代のレンズがついていけるかどうかという点だった。

いくつかのテーマを抱えたスナップが始まった。

円形絞りレンズが夜撮影で見せた表現と背景ボケ

日中撮影で感じたことは後ほど申し上げたい。

その前に作例を続けたい。

次は、夜の撮影だ。ニコンD850は、今回のDレンズより新しい「AF-S NIKKOR 85mm f1.8 G」では素晴らしい描写力であることはすでに確認した。

ニコンD850は夜の描写も美しかった!有効4575万画素でも高感度耐性は問題なし(作例あり)
有効4575万画素、高画素機D850は夜のスナップ撮影に使えるのか? Nikon D850で多用する安くて軽い単焦点レンズの紹介 ニコンといえば、世界のプロカメラマンから愛された一眼レフの一流ブランド。その一眼レフの時代も終焉し、いまやミラーレス全盛の時代だ。 それゆえ、この先、ニコンが新型の一眼レフを開発・販売するかも不明だ。もしミラーレスに全振りなら、プロ仕様のD6、高画素のD850、スタンダートなD780がニコン史における最後のレフ機ということになる。 そんなカメラ史の節目だからこそ、最後のレフ機になるやもしれないD850を入手した。D850なら広大な沼地のように存在するFマウントレンズ...

フィルム時代のレンズはどうなのか?

カメラの設定はシャッター優先オート。シャッター速度1/120秒、ISO3200で撮影した。

撮影者:Nikon D850 + AI AF Nikkor 85mm f1.4D (IF)

撮影補助:さきょう

撮影を終えて

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いかがだったろうか?

フィルム時代に誕生したポートレートの定番レンズは、いまなお高画素機でも十分な表現力を発揮してくれた。さすがニコン品質である。

まず、使い勝手だが、昼夜、それぞれ2時間余りの撮影中、重さやサイズ感は気にならなかった。85mmの大口径レンズが550gにとどまっているのだから重量的にもスナップ向きだと感じた。同時に、D850のグリップ形状の優秀さも一役買っていると思われた。

AFの速度や精度は決して抜群だとは言い難いが、スナップ中心の私には必要十分だった。

とくにAFが懸念された夜の撮影はノイズ対策でISO感度を3200に抑えたが、撮影後、ISO感度を思い切って上げ、シャッター速度と露出を稼いだ方が歩留まりをより一層上げることができたかもしれないと反省した。

次に表現力だが、日中の撮影ではその描写の上品さに感心した。さすがポートレートの定番レンズだ。このレンズは街の情景を優しく上品に再現し、ボケ味もまた自然で滑らかな上質さを備えていた。

一方、夜撮影だが、D850の表現力とも相まって、雅(みやび)な世界が待っていた。25年以上前に設計されたAFレンズが夜の街を華麗な色や精細な描写で再現した。

昼の上品さと夜の雅。フィルム時代のレンズは高画素機に負けることなくポテンシャルを発揮してくれたと感じた。

これで私のFマウント探訪はひと区切りがついた。

私がカメラから離れていた時期、空白の1990年代から2000年代のニコンを駆け足で探訪した。

私なりの勘で自分の用途に合いそうなカメラやレンズを調べ入手し撮影する。その過程で、ニコンにはハズレがなかった。これは私の勘が良いわけではなく、ニッコールレンズが幅広く高品質であることの証左だと思う。

そのニコンがいまミラーレスのZマウントに全力を注いでいる。ラインナップが出揃うまで、私はFマウントを堪能したい。いや、もしかしたらFマウントで十分かもしれない。そう思わせるには十分な性能であり、表現力だった。

その意味で、もしかしたら、ニコン最大のライバルは過去の自分たちなのではないか、とも、ふと思った。

次回のテーマはいよいよキヤノン。大衆機の王者キヤノンは、目下、ミラーレスのシェアNo1・ソニーを猛追中である。

そんなキヤノンのミラーレス機の中で、私が最も個性を感じたカメラ機材を入手した。私にとって初キヤノン機である。

最近は、もっぱら、そのカメラでスナップ撮影しているが、私が感じたキヤノン機の魅力と課題を率直に綴りたいと思っている。

乞うご期待ください。

 

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