なぜ、いまだに、初代Summicron 35㎜ f2.0(8枚玉)が人気なのか
モノクロフィルム時代のレンズでカラー撮影する面白さとは?
前回は、初代Summicron 35㎜f2.0(通称8枚玉)で、1月3日に東京・目黒区祐天寺をスナップした作例を紹介した。モノクロ時代のレンズだけあって、その描写は懐かしいうえに階調豊かで見事だった。
では、モノクロ・フィルム時代の8枚玉をデジタルライカでカラー撮影したら、どんな描写になるのか?
1月8日、再度、祐天寺をスナップした。カラーとモノクロを比較するため、前回と同じ被写体も撮影した。使用したカメラは、前回と同じM(Typ240)。M10の1世代前のカメラであるが、M10がCCDセンサーのM9に寄せた絵作りになったため、逆にMは独自性を増した。
デジタルライカは世代ごとにセンサーが異なる故に、どれも味わいが異なり、操作性を除いて、どのカメラが優れていると言い切れないのが面白い点だ。
一方、撮影に使用した初代Summicron 35㎜ f2.0(8枚玉)は1963年のドイツ製。57年前に誕生した約150gの小さなレンズだ。その小ささ故に、取り回しはすこぶる軽快で、いまではMの常用レンズと化している。私が常用レンズに決定したのは、今回のカラー撮影の結果に大いに満足したからである。
Leica M(Typ240)に初代Summicron 35㎜ f2.0(8枚玉)によるスナップ作例を紹介したい。
独特の発色とフィルムルックな描写!
前回1月3日は祐天寺駅からくねくね歩いて駒沢通りで撮影を終了した。今回は、その逆コース、駒沢通りを出発した。
次の写真は、レッド、ブルー、イエローの3色が登場するが独特の発色だ。
祐天寺に新たに誕生した「まいばすけっと」。現在、「まいばすけっと」は都心周辺部に増殖している感がある。コロナ禍で、食料品や日用品の小売りが需要を高めているのかもしれない。前回のモノクロと、今回、カラーで撮影した「まいばすけっと」。印象がかなり異なる。
モノクロもカラーも、どちらもいい。白黒の世界に隠されていた色は、こんな深い色だった。上から、紫、水色、赤、緑と、それぞれ味わい深い発色だ。
東京はすこぶる寒い日だったが、寒さに負けず、元気な人もいるにはいた。
捨てられた空き瓶と漆器と岩石?ではなく、お店玄関脇を彩る路面アート。このお店は良心的なお値段で鳥料理が絶品!
コロナ禍の平日、流石に通行人は少なかった。
コロナ禍は宅配業者が忙しい。
どっちが好きですか?8枚玉のカラーとモノクロを比較
階調豊かなモノクロと独特な発色のカラー
次の写真は、1973年に天皇のお召し列車を牽引した蒸気機関車C57117の主動輪。前回、モノクロで撮影したが、カラーで撮影すると、赤錆が情感を伴って伝わってくる。
もうひとつ、前回撮影したモノクロと今回のカラー写真。「ごっつい祐天寺」の看板に注目して欲しい。
淡い朱色と、所々のペイントロス、看板周辺の風化具合が素敵だ。
そして、祐天寺駅のすぐそばにあった巨大な岩石。
モノクロでは階調の豊かさが岩石の味を表現していたが、薄い緑と青が複雑に入り組んだ記憶色が岩石の味を表現する。
ようやく祐天寺駅に到着。今度は駒沢通りにランダムウォークした。
祐天寺駅周辺も確実に変化している。まず、東急ストアがリニューアルされ、品揃いも充実した。
住宅が続く路地裏を歩いた。突然、間口の小さな銭湯が現れた。佇まいがいい。
再び、祐天寺駅東口から駒沢通りに伸びる商店街に出た。多様なウィンドウと壁。
冬の日没は早い。店の光も点灯し始めた。
駒沢通りに抜けると、夕陽が力一杯に降り注いでいた。万人を励ますように・・・
撮影者:M(typ240) + Summicron 35㎜ f2.0 1st
撮影補助:さきょう
最後に・・・
M10の先代M(typ240)に、伝説的ともいわれる8枚玉・Summicron 35㎜ f2.0 1stをつけて、2回にわたって祐天寺スナップをお届けした。
あるときは現代的な抜けの良い写り、それでいて、どこか懐かしさを感じさせる描写、そして独特の色味。8枚玉はさまざまな表情を有するレンスだった。
今年最初のブログではアポズミクロンでスナップした記事を掲載した。今回の8枚玉は隅々までシャープさを競い合う現代レンズとは異なるレンズだが、それが逆に新鮮でもあった。
私はレンズの優劣を論じるのは好きではない。カメラやレンズ以上に大切なのはどんな被写体をどんな気持ちで撮影するのか、撮影者自身のあり方が最も重要だし、それが写真に現れるからだ。安価なレンズの描写力に驚く喜びだってある。
ただ、様々なレンズを経験することで見えてくることもある。まずは理屈抜きで、好きな機材で様々な街をスナップしていきたいと思う。必ずしも量は質を構築しないが、量のない質は存在しない。まずは撮る。人生はいつ終わるかわからないし、一度きりなのだから。
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