趣味としてのカメラ・レンズの支出を考える
カメラ機材支出は初任給あるいは手取り年収の1割程度が健全
なかなかコロナ禍が終わらない。政府は東京や大阪など4都府県に出ていた緊急事態宣言を5月末まで延長すると発表した。
旅行や交通、外食、百貨店、レジャーなど幅広い分野の業種が売上減に喘いでいるわけだから、当然、社員・従業員の給料が上がらないどころかリストラの不安に怯えている。
そんな時代にカメラという存在は生活の潤滑油であると同時に、カメラ沼やレンズ沼に陥れば、逆に経済的・精神的負担やストレスの素になりかねない。
当ブログでは、経済的負担の少ないカメラやレンズ選びも時に応じて掲載してきたが、今回はその続編を綴りたい。
2020年9月に発表された国税庁の民間給与実態調査によると、日本人の平均年収は436万円だという。実際は税金や社会保険料が2割ほど差し引かれるので、手取り収入は350万円余り、月給換算30万円前後と考えられる。
ここから、住宅費や光熱費、食費、教育費などを支出し、将来に備えた金融資産も貯めるとなると、残り自由に使える趣味資金は、手取り年収の1割、あるいは手取り月収程度がギリギリだ。
スマホでも撮れるような写真を手に入れるために、新たにカメラやレンズを購入するわけだから、たとえ30万円でもカメラとレンズに注ぎ込める人は恵まれている。
むしろ平均的サラリーマンがカメラ趣味に精神的負担や呵責なく注ぎ込めるのは、初任給程度、15万円前後から20万円程度なのではないかと推測する。
というわけで、今回は10万円から15万円で十分に楽しめるカメラシステムを考えたい。
初心者が最初にフィルムカメラと選択は避けた方が無難
最近、デジタルカメラや対応レンズが高額化しているせいか、若い人を中心に数千円で買えるフィルムカメラに手を出す人が少なくない。
確かに、フィルムで撮影した写真は懐かしさやエモさがあってSNSでも「いいね」をもらえそうな気がするかもしれない。しかし、最初は避けた方が無難だ。
その理由は次の2点。
- フィルム代や現像代がバカにならない
- 写真が出来上がるまでに時間がかかる
いまや36枚どりフィルム1個だけでも500円以下のものを探すのは至難の技。たった36枚の写真撮影に1000円近い出費となる。しかも現像代も同じ程度の負担を覚悟する必要がある。モノクロになると、さらに現像代が高くなる。
フィルムカメラは確かに安く中古で買える。しかし、フィルム代や現像代も含めたトータルコストはデジタルカメラ以上になってしまう恐れがある。
もう一点、すぐに現像せず、撮影したあと、机の片隅に撮影済みのフィルムが貯まるものである。私は撮影後にすぐ馴染みの業者に郵送しているが、それでも、いまも机に未現像のフィルムが2個ある。時間が経てば経つほど現像する意欲は減退する。
こうしてフィルムカメラは撮影機から観賞用オブジェと化してしまう。
その点、デジタルカメラは旅行など家族との外出時に持ち出し、撮影後すぐにみんなで鑑賞し楽しむことができる。
なんと言っても、何枚撮影してもコストはゼロなわけだから、機材さえ購入してしまえば、実に安上がりな趣味である。とくに、ミラーレス機はオートフォーカス(AF)が進化したうえに動画撮影も不便はない。
最初はミラーレスで撮影や写真のイロハやノウハウを学んだあと、余裕があれば、フィルムカメラや一眼レフにも手を出すくらいの間合いが賢明だ。
私が一押しするミラーレス一眼カメラはX-S10
最初の1台!どんなミラーレスカメラが理想的か?
さて、初めてのミラーレスを選ぶ際、どんな機種を選べば良いのか?
私自身、ライカやソニーなど様々なメーカーのカメラを使用したが、この3〜4年ほどに誕生したカメラであれば、どれを購入しても大丈夫だ。すでにミラーレスをはじめデジタルカメラは機能スペックが飽和状態。むしろメーカーが不要な機能を作り出し、スペックを引き上げ、その便利さを必死にアピールしている状態だ。
そうでもしなければ、新品価格を維持・引き上げが厳しいし、一部のスペックマニアに評価されないからだ。
しかし、趣味カメラとして、そこまでの機能スペックが必要かと思うことが多々ある。実際、私の場合、盛り込まれた機能の3〜4割くらいしか活用していないのでは?と感じている。
ただ、最初の1台は動画などあらゆる用途に対応できる万能的カメラの購入をおすすめする。具体的にはフジフイルムのX-S10が最善の選択だと考えている。
その理由は以下の通りだ。
- 400g台と軽量コンパクトでグリップも握りやすい
- センサーや画像処理エンジンはフラグシップ機と同じ
- X-T4と同じ種類のフィルムシミュレーションが使用できる
- 小型ボディなのに手振れ補正も内蔵している
- 動画撮影は4K30Pまで可能
- 背面液晶モニターはバリアングル
- 価格は新品が約12万円、中古は10万円台
- APS-Cセンサーだからレンズも安くて軽い
私が思うに、X-S10はフジフイルムが他メーカーからユーザーを奪い取るために登場した戦闘的中級機だ。それゆえ、正直言って、バーゲンプライスだと思う。
レンズ含めても15万円以内で完成するシステム
カメラのトータルコストを決定づけるのはレンズの価格である。さらに、カメラ機材のトータル重量を決めるのもレンズの重さである。
最近の中古市場を見ると、フルサイズでも古めのミラーレスは価格が下落しているので、その安さに心が惹かれる人も少なくないと思う。
ただ、その安さはボディに限った話である。
フルサイズのレンズは総じて高い。レンズはボディと異なり、中古相場でも比較的値が下がりにくいためだ。さらにフルサイズ用のレンズは重くて大きい。
一方、APS-Cはボディもレンズもともに安くて軽い。従って、APS-Cはカメラシステム全体を安くて軽く構築することができる。
ちなみに、X-S10の場合、XC15-45mmレンズキットは新品でも約13万円だ。ボディ単体の価格にレンズ代1万円を上乗せしただけで、撮影が始められる。
フラグシップと同じ最新のセンサー・処理エンジン!作例
裏面照射型「X-Trans CMOS 4」センサーと高速画像処理エンジン「X-Processor 4」
最後に、X-S10の心臓部について少し付け加えておきたい。
心臓部というのはセンサーと画像処理エンジンのこと。フィルムカメラで言うと、センサーはフィルム、画像処理エンジンは現像機の役割を果たす。双方ともデジタルカメラの優劣を決する根幹となる。
通常、メーカーはプロ機、上級機、中級機でセンサーや画像処理エンジンを差別化し、上位機種に憧れを抱かせることによって、消費者を高額機種に誘導するのが基本戦略である。
しかし、今回、ベストカメラに選んだX-S10は、フラグシップX-T4や人気の高級コンデジX100Vと同じ裏面照射型2610万画素「X-Trans CMOS 4」センサーと高速画像処理エンジン「X-Processor 4」を搭載している。それゆえ、最短約0.02秒の高速・高精度AFが可能となっている。
これにボディ内手振れ補正が搭載され、バリアングルで新品12万円、中古だと10万円台。初心者の最初の一台、あるいは中級者のスナップカメラとしておすすめするのは、このX-S10である。
同じ心臓部を持つX100Vの夜間撮影とX-T4の日中撮影(作例)
では、X-S10と同じ心臓部はどんな描写をするのか、X100VとX-T4の作例を紹介したい。
まずはX100Vから。主に夜間撮影である。
ご覧のように、暗所でも階調豊かに描写している。
フジの色は夜の描写も独特な味がある。
次に、フラグシップのX-T4の作例。日中、フィルムシミュレーションに新たに加わったクラシックネガで撮影した。もちろん、X-S10にも搭載されている。
以下は標準的なプロビアで撮影した。
フジフイルムのカメラは発色の良さやフィルム風の色味が魅力だ。しかも、18種類のシミュレーションを楽しめる。趣味カメラとしては、とても適した機材だと感じている。
次回は、私がスナップ撮影に最適なデジタル一眼レフに選んだPENTAX KPの暗所性能について考えたい。乞うご期待ください。
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